目覚めは始まり
意味が
理解できなかった。
彼等の言葉が頭の中で木霊して反響して
頭の中を狂わせた。
『え…、だって、わ…たしは…』
『…もう一度言おう
お前はずっと眠っていたのだ
18年間ずっと』
嘘だ。
嘘だ嘘だ。
だって焼けた塔で私は疲れたから少し横になって。
そして少し仮眠をとるつもりだけだったのよ?
嘘だ
嘘よ
彼等が嘘をついているんだ。だとしたらなんて趣味の悪い冗談だ。だって,18年?18日じゃなくて年って何よ?
『スイクン…おぬしは、あの日ワシ等がいなかった時、
何を見た?』
私が取り乱しているのを,ライコウさんが宥めて,エンティさんは此方をただ,真っ直ぐ見つめている。
エンティさんの声が頭の中でぐるぐる回る。
眠る前に何を,見た?ってそう,ああそうよ!!
あの
あの日は、
幼いミナキに
会ってしまった。
そう小さい頃のミナキに
「すごい!!あんな近くでスイクンを見るのは始めてだ!!ヒビキ、君もスイクンが気になるのなら見てみたらいい!!この下にいるぞ!!」
懐かしい声であり一番聞きたくなかった声が焼けた塔内に響いた。
その声は炎上してボロボロになった屋根の隙間から聞こえた。
私の赤い瞳に移ったのは
幼くないマツバ君とゴールド君と同じく幼くない
成人したミナキがいた。
『ミナ…キ…!?』
嘘だ嘘だ。
だって彼はまだ子供だったはず
私は自分の中で『嘘』で『現実』を覆い隠そうと必死に、
呼吸が出来ないで混乱している頭で『現実』を否定した。
「ヒビキ!君もあの美しさがわかるか!!?」
「はい、儚いような…そんな美しさがスイクンから感じます」
「ああ!俺は小さいころ,スイクン会って以来スイクンの虜なんだ!」
あなたの瞳に『スイクン』が写される
『私』ではなく『スイクン』に
「終わって」
「始まってしまった」物語
嗚呼,
これは
嘘
じゃないんだ
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