紅をブルーに染めて
雨でぬかるんだ地を四足の足で無心で蹴った。
びちゃびちゃ嫌な音が雨の中,やけに大きく聞こえてあのミナキを探してハナダまで走ったあの日に戻った感覚になる。
でも,本当に私は戻っていたのだ。
そして見られた。
この体ではもう会うことはないと決めたはずの,彼に
ミナキに
見られてしまった。
恐らく先ほどの少年はミナキだろう。…いや「恐らく」でも「だろう」でもない。私が彼を見間違えるはずがない。先程の少年はミナキだ。
色の抜けたような茶色の髪に,少し跳ねた髪の毛。そしてあの明るい色の緑の瞳と目が,あった。
彼は言った。
「綺麗な,ポケモン」だなって。
「おれはミナキって言うんだ!!」
私を,スイクンを見る目は輝いていた。違う違うの。その表情は私にずっと向けてほしかったけど,スイクンに,いや私?ああもうその顔で見ないで。
だってそしたらスイクンはまた彼を危険にさらすのだろう
いや私が彼を危険にさらすのだ。そう,私はスイクン
彼が焦がれたあの北風。
それは彼を
また
スイクンに依存させてしまった。
私は生まれ変わっても自分に嫉妬し続けて生きるのだろうか。
私は…
スイクンは
何故泣けないのだろうか。
この雨は私の涙なのか
私が死んで北風に成ったときから心の止まない雨は私が泣けないから止まないのだろう
『好きです』
『愛してます』
『だから私が憎くて仕方がないです』
私の心は晴れないだろう
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