愛,逢,哀 | ナノ
私の存在を否定


好きな人がいた。


ずっと,ずっと好きだった人がいた。

だけど彼女は僕じゃなくてもう一人の幼なじみの彼が好きだった。
僕は彼女が幸せならいいと思い、いっぱい相談を受けたし。本当は聞きたくもないのろけ話も聞いた。
その時の彼女の笑顔が大好きだったから。

そう,「だった」のだ。過去形。
もう戻れない,あの嫉妬と彼女への愛が溢れていたあの日々はもはや過去形になってしまった。

















彼女は死んだ。




もう一人の幼馴染み…,ミナキ君のせいで










その日は皆,夜の用な真っ黒のスーツを着ていた。一度しか会ったことは無いが彼女の両親もその場にいて,ただ泣き崩れていた。雨が降っているせいで,あまり聞こえないがきっと枯れるほど叫び泣いているのだろう。彼女の母親にいた周りの人間もそうだ。同じく真っ黒なスーツを着て,泣いている。雨のせいでさらにこの場の空気が沈んでいた。


でも,そんな真っ黒の中

一人だけ場違いの用な,彼がいた。




「っ…君は!何のためにスイクンを追い求めていたんだ…!?」


僕は迷わず彼に近づく。
僕が見えてないのか,見る気がないのか。或いは両方か何も,言わない,虚ろな目をしたミナキ君はただ「俺が,おれのせいだ」と言う。
そうだ,そうだ!お前のせいだッッ!!なんで…!死んだのがミズキなんだ!何故君じゃないんだ!

あまり大声を出すことに慣れていない僕の咽が震える。そんな僕にミナキは何も反応しない。

「君はミズキを…」



「君がミズキを殺したんだ…!!」




彼女の葬式の時,僕は彼を責めた。
ミナキ君にこんなことを言ってもミズキが帰ってくる筈がないのに。





「俺も…わからない…」



「っ!君は…!」










彼は昔言っていた。



【スイクンはとても綺麗なポケモンなんだ!】


【うん。知ってるよ。ホウオウの甦らしたポケモンでしょう?】


【おれ、スイクン捕まえたらミズキにやるんだ!】


【何でミズキに?いいの?】









【ああ!おれがスイクンを好きなのはスイクンがミズキに似てるから好きなんだ!】






彼はスイクンでミズキにプロポーズしようとしていたのだ。だが彼は愚かな事にそのスイクンで彼女を殺したんだ。




「僕は君を許せない…」


そう言って彼とはもう何年も会ってない。

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