止まない雨は大罪の証
シトシトシト…
降り注ぐその雫は"ソレ"の頬を伝ってポタポタと落ちていく。
時期は6月,時刻は午後15時頃だろうか。
今この場所、カントー地方のとある場所には雨が降っていた。
……正確に言えばカントー地方のハナダシティの岬"のみ"に雨は降っていた。そこにはとある一匹のポケモンとがいるからだ。紫色の鬣を持った"伝説"と言われるポケモン。
名を、
「スイクン」
男の、一言発した低い声が静かに雨の中に落ちていく。
そう、伝説のポケモンの名はスイクン。
北風の生まれ変わりと言われる水タイプの伝説のポケモンだ。そんなポケモンを目の前に、濡れる事を気にもせずに雨に打たれ続けている青年がいた。
先程スイクンの名を呼んだ男だ。一匹と一人はトレーナーとパートナー、そのような雰囲気ではない。見つめあったまま固まっている一人と一匹は微動だにしなかった。
まるで、呪いでもかかっているかのように、男はただそのポケモンを見つめる。
まるで、呪いでもかけられたようにそのポケモンも、男を何処か寂しげに見つめた。
💧💧💧
"嗚呼、この雨は止まないね"
"これは私が犯した罪の象徴だから"
そんな事を思いながら雨にうたれている"彼"を見据えた。"彼"は「人間なのに」傘もささずに自身が濡れていく事を気にせず、私のこの赤い瞳から目を反らさない。
その"彼"はとても、とても変わり者だった。ずっとずっと一緒だったからよく知っている、……けどそのセンスは未だにちょっと理解できない。
彼の格好は赤い蝶ネクタイに紫色のスーツ。そして白いマント。――――――そんな個性的な格好をした彼との再開は何百回、いや何千回目だろうか?
そして、そんな男は先程も言った通り"私"を見つめている。私の、この姿を。
だから私も目を反らすこともなく、ただ真っ直ぐ貴方の眼を見ていた。
「…"スイクン"…」
擦れるような声で、やっと彼が発した一言。
ソレは"私"の 名前。
ソレは"私"の個体名。
自身の発した言葉き泣きそうになりながら彼は私を静かに見ていた。
嗚呼、泣かないで。
私は泣きたくても泣けないのだから。
私だって、彼に"また"会えた事にとても、とても嬉しかったのに、「この体」では涙は流せない。
だって私は、――――――だもの。
涙なんて、いらない。そんなものがいる必要のない存在だから。
嗚呼、泣きたいなぁ。
貴方みたいに綺麗な涙で泣けないけどね。
涙の代わりに雨が私の頬を伝って、ポタポタと落ちていく。まるで泣いているみたいにポタポタポタポタ音を立てて
そう……雨が、これが、私の『涙』だ。
そして私の『罪の象徴』
そして、そして。もうひとつ。
「私はお前が、好きだよ」
彼はそう言って、笑う。嗤う。わら、って
愛おしそうに「私」を呼んだ。
「"スイクン"」
犯した罪を償うまで止むことのない『呪い』だ。
嗚呼、いつまでこの雨はふるのでしょうか?
prev 戻る next