足元に広がる現実と過去の世界
振り向きざまに見た自分の姿
答えはどこだ
君は何者だ
呆然と立ち尽くしては
僕は何かに吸い込まれるように
一歩一歩
爪先の向く方へと足を進めた

午前5時
朝霧と、身体を締め付けるような低気温
黒のコートを身に着けて
いつもと変わらない
いつもと同じ
車一台分が通れるくらいの道路を歩く

コンクリートに固められた街並み
ひとつひとつが冷たい熱を帯びて
流れる空気と虚勢の中に
世間体に馴染みきった人々が
愛想笑いを繰り広げる



本当の姿など、どこにあるのか
目を閉じてみれば
心のどこかで叫んでいる自分が居る

ここに居る
本当の"僕"はここなんだ
ここから出してくれ
ここから
現実から閉め切られたこの暗闇から

もう"僕"は君には必要ないのか
ねえ、君は誰
"僕"の居ない僕
"僕"を閉じ込めた僕

さあ正体を暴け
仮面を剥ぎ取れ

現実に居るのは"僕"じゃない



さよならを、した
あの日、あの時
苦しみと哀しみの中で
消し去ってしまおうと思った
そうすれば何もかもが上手くいく
そう信じていたから
いや、そう信じたかった
自分に言い聞かせるように
何千回何万回と唱え続けて

現実はいつでも
見えない未来に囲まれている
過去は僕の過ちを責め続ける
期待と不安
僕の身を縛り付けて
僕の非力な願いや自由さえ奪って

嘲笑え
無関心なのは知っている
繰り返される質問
大丈夫かと
まるで同情するかのように近付いて
結局何も無く終わる

深々とフードを被り
顔を隠し
その身ごと
何百人と居る人混みの中へ埋れていく
人目を気にしながら
彷徨いながら



どこにでもあるような
そんな部屋
一つの机と一つの椅子
クリーム色の柄の無いのカーテン
ちょっとした棚と収納スペース

窓から射し込む陽の光で照らされる
電気を付けなくても充分明るく
流れ込む風が空気を揺らして
髪と髪の隙間を通り抜けるこの感覚は
まるで誰かに
優しく撫でられているかのよう

"僕"の元に戻っておいでと言う
この声を、僕は知っている
どこで聞いたのだろう
どこで知ったのだろう

足元に広がる現実と過去の世界
振り向きざまに見た自分の姿
答えはどこだ
君は何者だ
呆然と立ち尽くしては
僕は何かに吸い込まれるように
一歩一歩
爪先の向く方へと足を進めた



本当の姿など、どこにあるのか
目を閉じてみれば
心のどこかで叫んでいる自分が居る

ここに居る
本当の"僕"はここなんだ
ここから出してくれ
ここから
現実から閉め切られたこの暗闇から

もう"僕"は君には必要ないのか
ねえ、君は誰
"僕"の居ない僕
"僕"を閉じ込めた僕

さあ正体を暴け
仮面を剥ぎ取れ

現実に居るのは"僕"じゃない



過去の僕
未来を照らし出す存在
そして未来の為に
決して消えることの無い証拠

今を歩めるのは君だけ
未来を見れるのは君だけ

現実に居るのは"僕"じゃない

現実に居るのは君だよ

硬いコンクリートの上を歩き
どんなに愛想笑いを繰り返したとしても
どんなに大切なものを、大事なものを
手放すことになったとしても
終わることは無い

歩むとは、少し止まりながら、また進むこと
止まっても良い
振り返り、思い返し
正しい道を、未来を見つけるために

僕と"僕"
現実と過去の世界

答えはここだよ
この場所
その足元

照らし出すために"僕"が居る
暗闇なんかに負けやしない
現実の僕のために
過ちを責め続けるよりも
その後悔を頼りに正解を見い出せ



本当の姿など、どこにあるのか
目を閉じてみれば
心のどこかで叫んでいる自分が居る

"僕"だけが僕に伝えられるから

歩むべき道を
進むべき方向を



さあ正体を暴け
仮面を剥ぎ取れ

僕という名の未来を照らすために





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