「入るぞ」

声と共にスッと襖が開きお盆を手にしたろ組の鉢屋三郎が入って来た。
三郎は勘右衛門の隣に腰を下ろし勘右衛門が辛く無いように起き上がらせてから、持参した食事を勘右衛門に食べる様に促した。
勘右衛門は、なぜ三郎がここに来たのかといろいろ疑問に思う事があったが、取り敢えずわざわざ食事を持って来てくれた三郎に礼をいいながら盆を受け取り、湯気を立てる卵粥に火傷しない様に冷ましながら食べ始めた。

「美味しい!」

「当然だ、なんてったってこの私が腕に縒りをかけて作ったんだからな!」

これ鉢屋が作ったの!?と驚く勘右衛門に三郎はふふんと鼻を鳴らして満足げに、なんだ?惚れ直したか?と、にやにやと聞いてくる。
そんな三郎に勘右衛門は、この一言が無ければ格好いいのに…と心の中で呟いた。
三郎は勘右衛門からの返答がないのを別段気にする素振りもなく、食べたら次これな、と一緒に持って来ていた湯呑みを差し出して来た。

「これは?」

「大根おろしとおろし生姜を熱湯で溶いた物だ、喉に良いからちゃんと飲めよ」

その言葉に勘右衛門は、わざわざ自分の為に粥や薬湯まで作って来てくれた三郎になんだか心が、ぽわっと温かくなった。

「鉢屋、ありがと」

「礼は良いからさっさと治せ」

うん!と勘右衛門はいいながら笑みを浮かべ、三郎が持って来てくれた食事を完食した。
そして布団に横になり、鉢屋が優しいって変な感じ、と消え入りそうな声で呟いた。
そんな勘右衛門の小さな呟きを目ざとく聞き取った三郎は勘右衛門に不敵な笑みを浮かべ、風邪が治ったらきっちり礼はして貰うからな?もちろん体で…、と耳元で話す三郎の声に勘右衛門は、ただでさえ熱で赤くなっている顔を更に赤くした。

「なっ、ななななにいって?!」

「なにって委員会でしっかり働いて貰いますって事だけど?勘右衛門ったら何を想像したんですか〜?やっらっし〜」

「お前の言い方が紛らわしいんじゃないか!!」








(もぅ…あっ、凄い今更だけど
なんで俺が風邪で寝込んでるって
知ってたの?)
(そりゃ〜勿論、兵助に聞いたからだが?)
(兵助に?)
(あぁ…なかなか話したがらなかったんだが、どうしても外せない用事が出来たんだと渋っている兵助から聞き出した)
(ふ〜ん…)
(ふ〜ん…って
聞いといてそれだけかよ…)



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