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ファッションショウ


特に用事がなくても、互いの部屋に訪れるようになったのはつい最近のこと。
出会ってからこれまでに共に過ごすための言い訳を見つけるのに苦心していたソーマはつい理由を探してしまう。
いつも理由を求めていたシズカがやっと素直に受け入れるようになったものの、これはもう癖だ。
博士の伝手で手に入れたという菓子を手土産に部屋の前に立ち、ドアをノックする。
「シズカ、俺だ」
しばらくしてドアが開き、銀の髪を揺らしたシズカが目の前に現れる。
「ごめんなさい、着替えていて」
そう言われて初めて服装に視線をやる。見慣れないワンピース…シズカのクローゼットにあるとは思えないフリルとリボンに溢れてている。
「…珍しいな」
「父からなの。アユムと同じね、人を着せ替え人形にするのが好きみたいで」
部屋の中に入ると確かに何着も服が並んでいる。察するにシズカの父親は少女趣味なのだろう、フワフワキラキラとした視界に眩暈を起こしそうになる。
息子のアユムの方は反対にやたらと露出の高い服が好みで、実姉のクローゼットに服としての機能が行方不明になった布切れを詰め込み、そのうちの何着かはシズカの普段着として使われている。
「にしたって贈りすぎだろうが。他のもんが置けねぇ」
ベッド、ソファ、テーブルと服が並べられ、手にしていた菓子を包装紙が重ねられた棚の上にとりあえず避難させる。
「これから父に会うんだけど、可愛い格好が見たいってこの量よ。悩んでいたところだったから、ちょうどよかったわ」
「…待て、まさか俺に選べって言う気か?」
「だめ? 貴方の好きな服なら私も自信を持てると思ったのだけど」
シズカの困り顔にグッと唸る。
滅多に人に頼らない恋人に「だめ?」などと言われては頷くしかない。
「期待、するなよ」
「ありがとう。じゃあどれから着たらいい?」
その場でストリップが始まったり、何故か下着のプレゼントが混ざっていたりと、軽い気持ちで引き受けた服選びがソーマの理性をガタガタに揺らすことになるとは、今の彼には知る由もない。


2013.8.8


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