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無自覚症状


定期検査の結果を渡すと、ソーマは顔をぐっと用紙に寄せて項目を確認し出した。
自分自身に無頓着な彼にしては珍しいと榊は興味深く観察する。
検査結果に異常なしの文字が並んだことに榊は満足していたが、どうやら当人はそうではないらしい。
だいぶ柔らかくなったと評判の瞳に鋭い光が宿る。
「間違いないのか」
「ないとも。君は至って健康だよ、何か気になることが?」
問いかけに対し、反射的にソーマの口が開く。が、言葉としては発されずに目をそらされた。
実に怪しい。
「身体に不調があるのかな? ソーマ、何かあれば話してもらいたいね」
「本当に俺の身体は異常がないんだな?」
「検査の上ではそうなっているよ」
「…心臓もか」
心臓ねぇと榊は片眉を持ち上げる。
「捕喰されなければ50年は動くだろうね」
榊がさらっと答えてやると、やっと眼光が和らぐ。
「なら、いい。あんた自身は胡散臭いが、腕は信用してるからな」
「それで構わないよ。じゃあ来月また来るように」
頷くことなく退室したソーマのデータを改めて確認しながら、榊は笑みを零した。
もちろん結果はソーマに渡したものと変わりなく正常だ。
恐らく地球の誰よりも丈夫で、健康。彼を上回る人類がいるならばお目に掛かりたいくらいに。
とすれば心臓に対する自覚症状は無自覚のあれに違いない。
「どうやら君の息子は恋をしたようだ。君に見せてやりたいよ、ヨハン」


2013.6.4


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