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三度目の涙


姉さんが泣いているのを見たのは実は三回しかない。
リンドウさんが帰ってきたとき、おれの右目がアラガミに持ってかれちゃったときが過去二回分。
そして今日が三回目。
まあ、誰かさんはもっと見てるだろうし、今の姉さんの涙の原因でもあるんだろうけど。
「ソーマくんにいじめられちゃった?」
からかう口ぶりで尋ねれば、姉さんは違うと首を振る。
「たぶん、私が悪いの」
まあそう言うだろうと思ってました。
姉さんは人のせいにするのは悪と思ってる節があるし、自分を追い込むのが好きな人だから。
「馬鹿だね、姉さんは。本当に馬鹿」
真っ白い肌には痣がいくつかあって、それはソーマくんの激昂の証。
味方するわけじゃないけど、気持ちはわからなくもない。
姉さんの指輪見て、理性飛んだんだろうなぁなんて、昨夜の揉め事を想像する。
暴力は良くないけど、そういう部分引き出しちゃったという意味では姉さんがやっぱり悪い、と思う。
きっとよく出来た弟なら、姉さんを慰めて、泣かしたソーマくんに怒りの鉄拳でもお見舞いするんだろうけど、そんな気は起きなかった。
予約済のおれの胸はたとえ姉さんでも貸せないし、姉さんだって泣く場所は決まってるんだから。
「選ばなきゃ、姉さん。ソーマくんはもう選んでるよ」
「おれも選ぶから。姉さんとおそろい」
「…おそろいって言うのかしら」
姉さんが心配で、追い掛けるみたいに極東支部に来たけど、もう手を離そうと決めた。
空いた手はこの胸を予約した人を抱きしめるのに使えばいい。
「ほら行って。ひどい顔だけど、泣かせたソーマくんにはいい薬だよ」


2013.2.21


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