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水着デー


出撃に備え、ロビーにやってきたソーマは有り得ない光景に呆れ、そして目を背けた。
「ソーマ?」
正面を向けなくなった原因が近寄ってくる気配に回れ右したくなるがあいにくエレベーターは他の階に向かってしまった。逃げ道はない。
視界の端にすらりと伸びた足が映る。
華奢な靴は普段と違うが、肌の露出に抵抗のない彼女にとってさらけ出した足くらいは珍しい姿ではない。
しかし、それより上が問題だ。
彼女の身体を包む、いや、かろうじて隠しているのは黒い水着だけだった。
何の冗談だ。
そう聞いたところで、シズカは不思議がるだけで意図は伝わらないだろう。
そもそも彼女から冗談など聞いたことはなく、いかにも言いそうなのは同じく水着姿のシズカの弟の方だ。
故に、ソーマはストレートに要求を口にする。
「着替えろ」
「ソーマは黒が好きじゃないのね、やっぱり白かしら」
色素の薄いシズカには黒も似合う、と思っているが、そういう問題ではない。
「違うよ、姉さん。ソーマくんは純情でヤキモチや…」
「お前の入れ知恵だな」
余計な言葉を吐くアユムを遮る。
「凄むなら正面向いたらー?」
アユムのもっともな一言にぐっと言葉に詰まる。
「ほんと、ソーマってムッツリですよね」
「おれは堂々とアリサの水着見るよ?」
「最低」
「そこは、ドン引きです…がよかったなぁ」
半ば恒例と化したやり取りは無視して、シズカの方に意識を戻す。
それはシズカも同じだったようで、突然腕にしがみつき、そのままソーマの背後にあるエレベーターのボタンを押す。
「おい、シズカ!?」
「部屋に他の水着があるの。着替えるから、直接意見を聞かせて」
「ふざけるな、俺は仕事を…」
「選んだら一緒に出撃しましょう?」


2012.8.3


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