※リョ桜前提


我ながら不毛な恋をしているとは思う。それでも、彼にどうしようもなく恋しているのだ。

きっかけは些細な事。私が失敗したのを彼は黙ってフォローしてくれた。初めはただ格好いい人としか思わなかったけど、その時から少しずつ気にするようになった。そこから恋に落ちるのは早かった。0から1を生み出すのは難しいが、1から2になるのは簡単な事だった。

彼がテニス部の一年レギュラーでとても強い、とは聞いたことがあった。聞いたことがあるだけで、実際テニスの試合を見たわけではない。そもそも私は生まれてから今までにテニスをした経験が0に等しい。テニス自体に、そこまで興味がなかったというのが事実。しかし彼がテニス部だと知って興味を持ったのも事実なのだ。

彼の勇姿を一度でも見たくて、テニス会場に向かう。思ったよりもたくさんの人達がいて、ビックリした。頑張って欲しいな、とか勝てるかな、とか色々考えていたら試合が始まった。

圧巻。そうとしか言えなかった。テニスの試合はテレビなどで少し見たことがあったが、実際に見ると凄い迫力だ。ボールが何重にも見えたり、飛んだり跳ねたり、光ったり。
それ以上に、彼がかっこよくみえた。もちろん前からカッコいいのは知っていたけど、それとは違うカッコ良さだ。

試合の帰り道。まだ私の胸には、先程の試合の余韻が残っている。だから前をしっかり見ていなかった。

「キャッ、」

誰かにぶつかった。

「あ、あの、ごめんなさ...」

顔をあげた先にいたのは、私の想い人である、越前リョーマくんだった。
不良とかではなかっただけ幾分とマシだが、緊張のあまりに言葉が出てこない。その分、心臓がドクドクと煩い。顔も熱くなっている気がする。頭の中でグルグルしていると遠くから越前くんを呼ぶ声が聞こえる。

「じゃあ、次から気を付けなよ」

そういって走って行った。

ボンッと顔が赤くなる。
頭がおいつかない。
それは、家についてからもで、あまりの緊張に、今夜は眠れそうにない。


それから何日かたった。
友達が、先生に仕事を押し付けられたため、その友達の代わりに本を返しにいった。
本当に、本当に、偶然だったんだ


図書室には人がいなくて、図書委員がいないのに勝手に返してはいけないだろうと思い、本と本の棚の間を見てみる。
ガサ、と音がしたのでそちらの方に進めば人がいた。越前くんだ。
話かけようと思い近づこうとしたが、すぐに足をとめた。

女の子と一緒にいた。あの長い三編みは竜崎さんだろう。問題はそこじゃない。二人の顔が近い。いや、くっついている。ゼロ距離だ。

私は、頭の片隅で友達に謝りながら、図書室から離れた。廊下を走ってはいけないが、そんなのもお構い無しに走っていく。その場から離れたかったのだ。

着いた先は屋上だった。座り込んで空を見上げているとチャイムがなった。ああ、サボってしまったな、と頭は冷静になっていた。

本当は、知っていた。有名な話だ。竜崎さんと越前くんが付き合っているのは。
竜崎さんは可愛いくて、初々しいカップルでお似合いだと思う。
本当に、本当に、お似合いなんだ。



我ながら、不毛な恋をしていると思う。それでも、どうしようもなく彼が好きなのだ。本当に好きなのだ。

私は一人、大空の下で涙を流す。



titel:レイラの初恋


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