※流血表現含む


自分には好きな人がいます。
もちろん誰にも言っていない、もしかしたら柳辺りが知ってるかもしれないが、この事は自分だけの秘密です。その子は別段整った顔でなければ、別段何かに才があるわけでもないよくそこら辺にいる普通の女の子でした。でも、俺にとってはテレビに映るアイドルや、綺麗に咲く花々よりも大層美しく見えるのです。彼女が笑うと自分も嬉しくなり、逆に彼女が泣くと自分まで苦しくなります。それほどまでに俺は彼女を好いているのです。
そもそも人を好きになるのに理由がいるのでしょうか。俺は要らないと思います。カッコいいから好きになる、可愛いから好きになる、頭がいいから、運動ができるから、好きになる理由なんて人各々なのでいちいち聞いてどうなるのだろうとおもった。

ある日の事でした。俺は教室に忘れ物をしてしまい教室まで取りにいきました。俺が教室の机から忘れたプリントを出しているとき、彼女が教室に入ってきました。彼女も忘れ物をしたようです。その時に初めて彼女とマトモに話す事ができました。そしてそれ以降のしゃべる切っ掛けにもなりこの時ばかりは神に感謝しました。

これは、自惚れでも自慢でもありませんが俺はモテます。バレンタインもたくさんチョコレートを貰ったりします。しかし俺を好きになってくれる女性も恋人などよりは、アイドルを見るようなものでした。だから彼女が普通にしゃべりかけてくれたのが酷く嬉しかったのです。

彼女と親しくなってから一、二週間たった日のことです。彼女が頬を染めながら俺に尋ねてきました。その時の彼女は可愛らしかったのですがその内容は俺の淡い想いを打ち砕くものでした。
彼女は俺と同じ部活の、仮にB君だとしよう。そのB君が好きで、彼にプレゼントを渡したいので何時ぐらいになら渡せるか聞いてきたのだ。
その時、俺は衝撃的な事実を知ってそれどころではなく何を言ったのかわからないが、彼女はお礼を言って席に戻った。

初恋は実らない、と言うけれど本当にそうだと実感した。俺の心には、甘酸っぱくてほろ苦いような感情が遠い思い出のように感じた。俺は今まで失恋する側ではなくさせる側だったので、中学の恋愛1つでよく泣けるなと思っていたが、実際味わうと確かに辛い。
他の女子のように泣きはしない。むしろ感情全てが死んでしまったのかもしれない。それほどまでに恋と言う存在は大きいのか。

そう思いつつ家につきました。今日が偶然部活がなくてよかったです。もし部活があれば、こんなにもみっともない姿を見せなければならないからです。部長としてそんな醜態晒せません。常に部員の鏡となればいけないのです。俺は『常勝』立海の部長です。俺は神の子です。勝たなければ行けません。勝ち続けなければいけません。敗けは、赦されないのです。

練習は辛いです。それでも皆の夢を背負って戦うので、文句や不満を言ってなどいられないのです。そんな俺にとって彼女は天使のようでした。彼女を見るだけで疲れが嘘の様に無くなるのです。でも、彼女は俺を見ていませんでした。一度も俺を見たことなんてないのでしょう。ずっと彼を見ていたのでしょう。
黄昏ていると、一通のメールが届きました。噂の彼女からで、その内容は

『彼にプレゼントをあげれてオマケにメアドもゲットしました!
幸村くんのおかけです。ありがとう!!』

ああ、プレゼントを渡せたのか。上手くいってるんじゃないか。明日の部活で何かいってやろうかな、等色々な策を練りながら俺は眠りについた。



それからの展開は早かった。何度かやり取りを交わし、名前呼びになって、果てには付き合うことになったらしい。おめでたいじゃないか。彼女が幸せになったんだ。それだけでいいじゃないか。幸せなんだから。
ああ、そう言えばもうすぐ誕生日とか言ってたっけ。彼女宛のプレゼントを買ってあげよう。彼女は白いからきっと綺麗な赤色がよく似合うだろうな。

誕生日当日、彼女を空き教室に呼び出しました。倉庫化になって誰も来ないソコは汚かったけど、彼女の為に一生懸命掃除して綺麗になりました。その教室を彼女によく似合うであろう赤色で染め上げました。鉄の匂いがしましたがきっと気のせいでしょう。

彼女がやってきました。俺はクラッカーを鳴らしながら笑顔で、誕生日おめでとう、と言いました。彼女はありがとう、と笑ってくれました。
俺は彼女の為に用意したプレゼントを渡しました。彼女が大好きな物を渡すと、彼女から一瞬にして笑顔が消え、泣き初めてしまいました。どうしたことでしょう。俺は心配になって彼女に駆け寄ろうとすると嫌っ、と拒絶させられました。彼女は来ないで、来ないで、どうして、と泣きわめいていました。
俺にはどうして泣くのかわかりません。何故泣くのか。好きなのを貰って嬉しくないのか。それとも欲しいものではなかったのか。思考を巡らせていたら彼女が俺に向かって問いかけました。

「どうして、どうして幸村くんはこんな酷いことをするのっ!?」

酷いこと?
なんだろうか。

「何で、何で、何で彼を殺したのよ!!」

彼女の腕に抱かれているのは真っ赤に染まった人形、ではなく一人の少年の躯だった。至るところが切り刻まれて痛々しい。周りを見渡せば他にも同じ様なものが幾つかあった。

「仲間じゃなかったの!?」

ああ、仲間だよ。
大事な大事な仲間さ。だから手伝って貰ったんだよ。ああ、心配しないで?
君も、綺麗な真っ赤に染めて直ぐ彼の元に行かせてあげるから_____



やっぱり自分の予想は当たりました。彼女には赤が似合いました。今彼女は自分の腕の中にいます。抱き締めてあげているのです。でも何故でしょう。
彼女は何も喋らないのです。彼女は一切動かないのです。彼女は、冷たいのです。ああきっと彼女は眠ってしまったんですね。



(少年の足元には少年が誰よりも愛した可愛い少女の亡骸)
(少年の周りにはかつて少年の仲間達だった者の亡骸)
(少年の手元には娘と仲間を殺したおしゃれナイフ)
(少年は愛情を知らない)



***
title:レイラの初恋


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