朝、ベッドから降りたら、毛を綺麗に纏めてリボンを確認してやっと私の優雅な一日が始まる。ピカピカの銀色の皿に置かれた食事を取りベッドに戻る。パパやママがいなくなってから華麗に窓の外へ。
私がパパやママに内緒にして向かうのは大好きな人のいる場所。そこに私は行ってはいけないので内緒でいくのだ。
町行く人は皆、私を見るたび可愛いと言ってくれる。今日はおめかしをしたんだから。私の向かう先は少し距離がある。それでも愛する彼に会うためなら関係ない。私の体力なめないでよ?
そんなこんなでほら、見えてきた。あの大きな白い建物の中に彼はいる。彼に会うのにあと一歩。でもその一歩が大変なの。あの中に入って見つかってでもしたら追い出されちゃうからね。でも大丈夫!何度も来たことがありその中で私は成長していったのだ。あまり人に見つからない隠れ道を知っている。その道は私のように小柄で身軽じゃなきゃ通れない。その道を通って彼の元に向かう。
窓の外からコンコンって叩けば彼はすぐに窓を開けて抱き締めてくれた。

「名前、また凄いところから来たね。来てくれるのは嬉しいけど見つからないようにね」

そう言うけど彼の顔は優しく微笑んでいる。えへへ、とかれの胸に軽く頭を押し出せば優しく撫でてくれる。
彼と初めてあったのは冷たい雨が降り注ぐ日だった。道の端で冷たくて動かなくなった体を丸め必死に耐えていたとき、彼は私を見つけてくれた。優しく微笑んで大丈夫?って声をかけてくれたんだ。タオルで優しく拭いてくれて、そこから私は彼に一目惚れをした。

コンコン

「どうぞ」
「幸村、見舞いに来たぞ」

ズキリ

胸が痛む。私は彼らの事が正直嫌いだ。元々人間はそこまで得意じゃない。パパとママと精市とかを除いてね。
彼らは私の精市を奪っていくのだ。仲間と仲良く過ごすのは別にいい。

「精市、大丈夫?」

ほら来た。私はこの女が好きじゃない。この女は精市の所属する部活のマネージャーとやらをやっている。ベタベタと精市と仲良くして何様のつもりなのよ!

「君も来てくれたんだね。ありがとう」

精市は笑った。私に笑う笑顔とは違い嬉しそうな笑顔。こんな精市の顔見たことない。

私は知っている。あの女が精市の事を好きなことを。その分精市があの女の事を好きなことも。私のこの恋が叶わない事も、知っている。

「俺たちは帰るとするか」
「あっ、じゃあ私も」
「いや、お前はここにいろ。その方が精市もいいだろうから」

二人はまだ付き合ってない。でも付き合うのだって時間の問題だ。その事を知っているのか他のみんなはゾロゾロ出ていく。きっとここで告白させるつもりなのだろう。私もここにいてはお邪魔だろう。少し空いている窓から外の木に飛び乗った。中をみずに空を見上げた。私の精市が、アイツの、彼女の精市になってしまう。
数分たった頃中から笑い声がした。あの二人の声しかしないと言うことはうまくいったのだろう。

初めて信頼できる人だった。道端で一人だった私に温もりをくれた人だった。暗い世界に光を与えてくれた人だった。本当に、好きだったんだ。
叶わない恋だってわかってた。でも諦めたくなかったんだ。

「おいで、名前」

ガラリと窓を開けて私を呼ぶ。私はそれに応えるため胸にダイブする。

「可愛い猫だね。精市の猫?」
「ああ。名前って言うんだ。可愛いだろ」

よしよし、と頭を撫でてくれる。
確かに私は精市の恋人とかにはなれないけど、精市の膝上は私だけの特権。えへへ、うらやましいでしょ

「ニャア〜」


(可愛い〜。次さわらせて!)
(ああ、良いよ)
(私はまだ精市の彼女って認めてないからね!)

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初短編がまさかのネコ落ち。
犬派だけど犬よりも猫の方が書きやすい。もちろん猫も好きですよ?


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