幸せな夢の終わりはいつだって残酷だ | ナノ


憂き世のマリア  




パチっと目が覚めて、上半身を起き上がらせる。
キョロキョロと周りを見渡すと黒を基調とした自分の部屋にいた。

ああ、またあの夢か。

いつも二人の少女がでてくる。二人で笑って遊んでいる。しかし、最後には片方の少女は転落してしまうのだ。後味は悪いがまだ見ているだけなら幾分もマシだ。少女が転落するとき、まるで自分も落ちていくように感じるのだ。実際に体験したように、自分が死に向かうような...

そんな目覚めの悪い日は、転校初日という大事な日だ。余計に彼女の気分は悪くなる。
苛立ちを募らせながらも、皺や埃1つない新しい制服に袖を通す。ドアの向こうから自分を呼ぶ使用人の声が聞こえ、今行くと返事をする

「冥様、今日から新しい学校ですがお迎えの方はどうされましょう」
「いらない」
「了解しました」

送迎の車などただただ人の目を集めるだけのものだ。不用意に目立ちたくない。

そういえば、新しく行く学校は雷門といっていたな。どんな学校なのだろうか少し楽しみだ。
前の学校では家柄だけでずいぶんと浮いた。別にそれが嫌なわけではない。使う価値のないがらくたが沢山いるよりも、自分と同等又はそれ以上の人間といるほうが此方としても楽なのだ。

昔から欲に満ちた大人の中にいた私の思考は周りよりも落ち着いて冷めたものだった。だからか、“こちら”に来てからは心から許せる人など無に等しい。
あれ、何か可笑しい。何か変ではなかったか。いや、気のせいだろうか。


嗚呼、本当にあの夢を見るたびに気が狂う。
知らない自分を写し出されているようで、嫌気がさす。



titel:レイラの初恋


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