時は連休日。この日は四天宝寺との練習試合であり彼らは今、大阪に来ている。

「今日の二時からは練習試合だからそれまでには戻って来るように」

二時から始まる合同練習までの自由時間。

「いよっしゃあ!」
「たっこ焼き、たっこ焼き」

王者と言えども高校生である。彼らはあまり訪れない地に興奮を隠しきれない。といってもレギュラーだけなので一部だけだが。

「丸井に切原!貴様らたるんどるぞ!」

当然怒る人も出てくる。騒いでいた張本人のは丸井ブン太、切原赤也そしてジャッカル桑原の三人である。

「俺、さわいでないぜ!?」
「静かにせんか!」
「・・・なんで俺ばっか...」

そして叱ったのは教師、ではなくコーチ、でもなく、正真正銘高校三年生で、副部長の真田弦一郎。
今回は彼らの説明を割愛しよう。また彼らが活躍するときに説明しようか

*

S,Ysid

というわけで俺のターン。
ドローとは言わないよ。

王者立海の部長である俺も、あまり訪れないのでそりゃあ楽しみにしている。赤也とかほどバカ騒ぎではないけどね。

「精市、次はどこ回る」
「そうだね。あのカフェにでも入ろうか」
「全く。たかが大阪にきたぐらいで浮かれすぎだ」

ちなみに俺と一緒に行動してるのは蓮二と真田。真田はまださっきの事をネチネチ行ってる。ウザイ男はモテないぞ。

まあ、真田の事は置いといて、俺たち三人は近くにあったカフェにでも入った。大阪でも神奈川や東京などの関東とあまり変わらない風景もある。当然と言えば当然か。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
「三名です」

ニッコリと営業スマイルを浮かべる店員に三名といってから、窓側の席に案内された。

「これぐらいで浮かれおって。だから・・・」

真田、まだ丸井や赤也の事いってたんだ。ちょっとあきれる

「弦一郎、そこまでにしとけ。こう言うのは学生の間だけだ。楽しませてやれ」
「ムムム、しかしだな、」
「蓮二の言う通りだよ。楽しいのは"今"だけなんだから」
「幸村・・・・・・」
「ほどほどにするんだぞ」

あれ?何か変なこといった?
俺はあくまでフォローをしといただけなんだけどな。
そう思いながら窓の外を見た。

目に入るのは町行く人々。
その中で一人、目に入る人物がいた。

「せいいち!」


ふいに聞こえたその声と共に俺は動きだしていた。

「精市?どうかしたか」
「ゴメン」

ただそれだけを言い俺は店を駆け出した。

*

どこだ。どこにいるんだ。
ただ俺は知らない町を駆け巡っていた。
何故か、と聞かれれば彼女の声が聞こえたから。

あの声は幻聴だったかもしれない。思い違いだったのかもしれない。でも、でも、もしかしたらって、淡い期待が胸を走る。

そんなとき、人混みの中に見えたあの面影。

「まって!」

伸ばした手は、空を捕まえた。

やっぱり、あの面影もあの声も、全ては幻だったのか。



titel:反転コンタクト

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