「待って、」

俺は走っていた。
幻かもしれない。それでも、必死に追いかける。
手を伸ばすが、己の掴んだものは、空だった。

「精市!」

声がして後ろを振り替えると、柳と真田がいた。二人とも幸村を追いかけて来たのだろう。

「二人、とも」
「どうしたんだ一体!いきなり走り出して...」

突然走りだしたんだ、不振に思って当然だろう。

「ゴメン何でもないよ」
「せい、」
「さぁ、いこうか。もうそろそろ時間だろ?」

二人は何か言いたげだったが、それ以上先は追求しなかった。
長年の付き合いだ。きっと何か感じとったのだろう。


*


「みんな、揃って・・・ないね」

精市が周りをサッと見渡すと、いない人物がいる。赤い髪にワカメみたいな髪、そして茶色のスキンヘッド。その目立つ頭がいないのだ(そもそもテニス部自体が目立つというのはこの際無しとさせてもらう)

「お、遅れてすいませんっ!」

息を切らして走ってくる噂の三人がやってきた。

「貴様ら、たるんどるぞ!」
「真田、いいよ。あの三人には後で、ね?」

その発言でヒッと周りが驚く。
遅れて来た三人も悪いが、それはそれでかわいそうだろう。

「フフッ。冗談だよ、ほら行くよ」

微笑んだ精市には先程のような動揺は見えなかった。だがあいつは一人で何でも背追い込むやつだ。
でも、今自分が動けないのはこの柳が一番わかっている。
今は、様子見と行こう。



titel:反転コンタクト

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