■ 001

ミーンミンミーン

彼女とはじめてあったのは、今日のように蝉の声がなり響くある日。これは俺がまだ中学3年の頃だったと思う。
俺の小さい方の妹である月火がいきなり友達を家に連れてきた。元々友達の多い月火はいろんな友達を家に連れてくることは多かった。驚くのはそこではなくその友達だ。

雪のような白い肌。いや、別にこれは何の問題もない。問題は髪型だ。彼女の髪型は生まれつきであろうか、ウェーブがかかっている。ここまではいい。問題は色だ。黒色でも、色素の薄めな茶色とかではなく、青色だった。青色。
外人でもいないであろう髪色だ。まず青色の髪の人間なんて初めてみた。髪を染めているとするならそれはそれで問題でもあるだろう。

白い肌に青い髪、当時の印象から彼女を俺は儚いと、感じていた。そう、はじめは。

「阿良々木さん、ジュースまだぁ〜?」

それが今はどうだ。
僕のベッドに横たわり、堂々と漫画を読む姿を見て、儚いとか、雪のようとか思えるわけないだろ!

「あのな、ここ何処かわかるか?」
「ん?阿良々木家の、阿良々木暦の部屋でしょ?」

僕はそういうことをいいたいのではない。僕がいいたいのは、

「なんでここにいるんだよ!?」

そう。これが一番不思議に思ったこと。少なくとも俺は今日誰も家にあげてないし、夏休みなので流石に大学の受験勉強も頑張ろうとした矢先だ。“なぜか”僕の部屋の、僕のベッドで漫画を読んでいるのだ。

「どうやって、と言われましても、阿良々木さんは何を聞いているんですか?
どうやってと言われても普通に入っただけですよ。それ以上でも、それ以下でもないんです」
「お前の普通が世間一般と同じにされては困る」

そう。こういうやつなのだ。
いつの間にかいると思ったら次の瞬間にはいなくて、いないと思ったら隣いたりとか、よくビックリさせられる。

「そういえば阿良々木さん。この間車にぶつかりそうだったんですよ。もう目の前に車がいて」
「へぇそうか・・・いやいや」

あぶないあぶない。ついつい流されてしまうところだった。

「え?まさかの無傷?」

ちょくちょく、車に跳ねられても運良く無傷という人は聞いたことがあったりもする。しかし、こいつの場合は違うんだ

「ええ。引かれそうになったんで逃げたんですよ」

“引かれそうになったから逃げた”。それは普通だったら走って車から距離を取るだろうが、それが出来る距離ではない。
ではどこに逃げたのか。いや、逃げたと言うのは分かりやすくいってるだけだろう。何故なら彼女は“ずっとそこにいた”のだから。

逃げた、でもそこにいた。普通なら意味がわからないだろう。俺もわからない。しかし、彼女の言ってることは、彼女にとっては普通である。彼女の普通は世界の異常であり、彼女自体が異常なのだ。


本題に戻そう。彼女はどこにいたのか。それは、自分のすぐ側にあり、絶対に離れない唯一のもので、もう一人の自分である存在、“影”だ。
影、その中に逃げた。いや、“彼女自身”が影に“なった”。彼女、幸村李華は、人間ではない。

「阿良々木さん、その言い方だと私がまるで、化け物みたいな感じじゃないですか」
「実際そんなもんだろ」
「ぶっぶー。ざんねーん、ハズレでーす」

ベェーっと舌を出し、不快そうな顔になる。これ以上変な事を言うと俺の身が危なくなる。

「・・・いや、余計な事すでに言ってますよ」

ムッ、こ奴に正論を言われるとは、なんたる失態。

「え?殴っていんですか?いんですよね?殴りますよ?」
「すいませんでしたっ!」

さすがに俺も死にたくはない。いや、死なないけど、こいつのパンチ何げ痛いんだって。

なので、前言撤回。こいつは、人間“だった”。今も人間と同じ体の造りだし、脳も一緒で、一見すれば髪の色意外普通の少女だ。睡眠や食事を取るのも変わらない。他の人間と違う、と言えばコイツは、“影に消えた”少女である。
影に出逢い、影にみいられ、そして、彼女自身が影になった。彼女自身が影になったことにより、彼女の体は不死の体となった。
影は死なない。ずっとずっと付きまとう。自分が死ぬまで、永遠に。
だから影になった少女は不死になった。

「私は、私以外の何者でもないんですよ」

影であり、不死であり、普通とはかけ離れており、でも、彼女は昔も今も、幸村李華である。

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