■ 011

「で、僕は何をすればいいんだ」

前回は駄弁っているだけで終わってしまったので今回ことは本題に入りたいというのが、僕の本心だ。今は床に座って大人しくドーナツを食べている(それがお土産だと言っていたはずだがそれはひとまず置いておこう)が、それに至るまでに多少のゴタゴタがあったのだ。

「お兄ちゃんに会って説明してください」
「は、説明?」

簡潔に言われたそれに少しばかり驚いた。いや、だって説明なら自分で出来るはずだ。多少ウザイ時もあるが口達者な彼女なら上手く纏める事もできるだろう。オマケに影の声は幸村以外聞こえないから動く人形だと言い張ればいいだろう。現在の科学だとできないほどのものになるがな。

「最初はそう思ったんですけどね。ほら、協力者がいたほうがいいじゃないですか」
「そういうものか」
「そういうものですよ」

笑ってはぐらかせられた気がするが、変につつくと面倒になる。

「それに・・・」
「ん?何か言ったか」
「・・・いえ、何でもないですよ。ほらほら、さっさと作戦会議でもしましょうよ」
『・・・・・・』

一瞬、ほんの一瞬だけ、影が酷く寂しそうな顔をした気がした。


***


一方、立海テニス部では...

「つまり精市の話を聞く限り、妹のドッペルゲンガーを見た、と」
「そう、そう言うこと」

精市の話はにわか信じられないものだったが、こいつが嘘をつくとは思えない。

「でさ、柳たちも来てほしいんだけど」

・・・ハ?
この男は何をいっているんだ。

「だからぁ、来いっつてんの」
「いや、その理由を聞いてるんだが」
「んー、ほら、人数がいたほうがいいじゃん」

まさかのそんな理由で...

「それに、ほら、ちゃんとしゃべるのとか久しぶりだしさ。俺だって緊張するんだよ」

そうか、精市も人間だからな。
何だ、そういう理由だったのか。

「俺の言うことは絶対だろ」
「」

とか思ってたらやっぱり精市は精市だった。さっきの感動を返せ。
精市はニヤニヤ笑ってる(目は笑っていないが)し、もう逃げられないだろう。

「それで、何時何処に行けばいいんだ」
「来週の土曜日、俺の家ね。あっ、もちろん真田も来いよ」
「うっ、うむ」

精市から離れた位置にたっている、弦一郎にも声をかけている。声がどもっているぞ、弦一郎。

「やっぱりさ...」
「何かいったか」
「いや、何でもないよ」

精市が何かいいかけていた様な気がするが、気のせいだったのだろうか。

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