■ 006

俺には妹がいる。
生まれながらのウェーブのかかった青い髪、茶色い瞳。その容姿は双子ぐらいにそっくりらしい。妹の方が目がパッチリして大きいし、髪も肩ほどまで長い。肌も常に長袖を着ているため、俺より格段に白い。背の高さも10cmほども違うし体格だって違うから歴然だと思う。俺にとってはそっくりと言われてもそこまでピンとこない。それはずっと側にいたからだろう。側、と言っても兄弟、家族だから小さい頃から見ていただけで、別段仲良しだった訳でもない。小さい頃は一緒に遊んでいたけど、今では軽い挨拶や必要事項しかしゃべらない。それも思春期だから、最近だからというわけでもない。定かじゃないが妹が小学校低学年からはこんな関係になっていたと思う。
しかし仲が悪いと聞かれたらNOと言うだろう。上で言ったように挨拶だとかはアッチからしてくれるし、こっちから喋りかければそれに答えたりとかはしてくれる。仲は良くないが悪いと言うほど悪くない。妹自身も嫌いではない。苦手意識はあるが。

昔は苦手ではなかった。むしろ何かあるたびにお兄ちゃん、と純粋で潔白で綺麗な目をキラキラ輝かせて笑いかけてくる妹が可愛くて仕方がなかった。勘違いしないでほしいが、別に今の発言に変な意味はないからね。でも何時からか、その目は変わった。好奇心大勢で輝いていた瞳は輝きを失っていた。全てを諦めたように、全てを悟っているかのように、全てに関心のない、闇に染まったような瞳だった。それは闇というより無に近いものなのかもしれない。
俺はその瞳が怖かった。自分の知っている妹じゃないみたいで。その日から俺は妹と距離を置くようになった。妹も俺に近づいてこなかった。そしてそれ以来からしゃべることがなくなり、挨拶とかだけになった。

その関係が続いて、妹も中学生になった。妹は近くの公立校に通い始めた。まあ当然と言えば当然なのだろう。俺はテニスを通じて知り合った仲間がいるし、家にも何度か来たことがあり何回か顔を合わせた事があるから妹は知っている。でも俺は妹の交遊関係を一度も聞いた事がなかった。知りたい訳でもないが、やはり少しは気になる。
自慢ではないが、俺は顔も良いし、勉強もそれなりにはできる。テニスをやっているから運動はもちろんの事。その事から俺はよくモテる。それが原因とかで苛めだとかも聞いた事がある。だから、妹が俺の事で苛められていたりしないか心配なのだ。しゃべらないとはいえ、実の妹だ。心配になるだろう。
あまりしゃべらないからか言いたくないからかはわからないが、聞いても「別に」の一言で片付けられた。
本当に友達がいないのでは、と心配したが友達はいるみたいらしく安心した。でも、あまり口数が少ないので上手くいってるのかなどは知らない。

今の俺は説明する暇があるほど焦っている。焦って逆に冷静になりすぎているほどだ。何故俺がここまで焦っているのか?
理由は妹だ。さっき説明したように俺には妹がいる。血の繋がった実の妹だ。その妹は今現在中学2年である。女子の中では比較的大きめの身長だ。といってもずば抜けて大きいわけでない。
ここまで俺が身長の事を押すのが俺の焦っている原因。俺の知っている妹は150後半から160前半で、大きすぎず小さすぎないのだ。俺の目が疲れているのか、やけにリアルな白昼夢をみているのか。

では、何があったのかご説明しよう。まず、今日の赤也の件で少し話そうと妹の部屋にまで来た。休日のこの時間は多分家にいるだろう。いなかったら居なかったで帰ってくるのを待ってればいい。そう思い妹の部屋に入ると誰もいなかった。しかしベッドの方から寝息が聞こえてきたのできっと寝ているのだと思いベッドの方に近づいた。変な意味なんてない。軽く顔を見てから帰ろうとしただけだ。もちろん寝ていた。青い髪に白い肌、そして小さな子供の様なプニプニしたほっぺた。あれ?何か変?
確かにこの平和な世ではこの年齢は充分子供だ。だがここまで幼くはない。しかしベッドで横たわる姿は妹の面影が有るものの、5,6歳と行ったところだ。

・・・俺も疲れたのかな。全国に向けて少し詰めすぎて疲れたから、こんなリアルな白昼夢をみるのだろうか。試しにほっぺをつねってみるが痛い。つまり夢ではないと言うこと。そっか、夢じゃないんだね!

あれ、何だろう。自分が傷付いただけだよ。ここまで俺は疲れていたんだ。うん、絶対そう。異論は認めない。異論があるなら全員イップスだからな。俺は神の子なんだからな。

ビシッと決めてから俺は妹の部屋を出て直ぐに自分のベッドで寝た。今度から少しメニューを減らすか、いやそれでは三連覇できない。よし、赤也のメニューを増やそうか。俺より若いんだし、元々赤也のせいなんだ。うん、そうだ。そうなんだよ。


後日、立海のテニスコートには切原の悲鳴が聞こえたとかそうじゃないとか。

[ prev / next ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -