■ 002

影。
人や物により光が遮られ、地面や壁に写る暗い領域。

影。本体と似たような輪郭だが、角度により歪むことから、心理学、文学に比喩としても使われる。

影。
死者を連想させ、亡霊とは弱く儚い影の現象である。

影。
生を意味する光、死を意味する闇とは異なるもの。生きても、死んでもないもの。即ち冥界である。

影。
夢や妄想に出てくる死者であり、自分のもう一つの魂である。

影。
抑圧や、生かしきれてない本来の力、また、未来に向かう未知の力。


影。
それは----------





ねぇ、聞いてくださいませんか。私の話を。

私、思うんですよね。

影が、儚いものなら、幽霊なら、歪んでいるなら、私は人間じゃないんですよ

あの日、あの時、私が『影』に消えたときから、私と言う人間が死んだんです。

そして、私と言う化け物が生まれました。

人間じみた事言って、人間の真似事をして、

鏡写しの様に生きているんです。

え?それで寂しくないのか?

寂しいですよ。哀しいし、虚しいです。まぁ、もう慣れたことなんですけどね

そんな顔、しないでくださいよ。別に気にしてなんか無いですから。

なんで私だったのか。どうして影に消えたのか。

きっと、私は“彼”になりたかったんです。光の存在に

何でも出来て、要領よくて、顔もよくて、完璧が似合う人間なんです。それは私の贔屓目を除いてもそう思います。

なりたかった。ずっと、ずっと、彼の様になりたくて頑張った。頑張って、いたんです。

結局なれなくて、諦めて、勝手に独りで絶望して。運命なんて結局こんなもの何です。

私は、何にもなれなくて、ただユラユラ意味も無く生きているんです。

フフッ。ありがとうございます。心配してくれて。その心が嬉しいです。

でも、私で良かったと思います。

彼は、彼に影は似合いません。彼には、輝いていて欲しいんです。

生きる意味も無く、夢も無く、ただ生きているだけの私と違って。

彼には夢がある。仲間がいる。彼は、未来に向かって今、輝いているんです

恨んだことだってあります。呪ったことだってあります。

でも、それ以上に好き何です。彼の事。もちろん恋愛感情ではないですけどね。

世界の誰に忘れられても、誰も私を知らなくても、彼が忘れてしまっても、私は世界を忘れない、彼を忘れなんとしませんよ。

もちろん、あなたも。

なんか良いですね。こういうの。意味なんてないけど、理由なんて無いけど、生きてるって、ここにいるって、感じられます。

じゃあ行きましょうか。えっ?どこにか?

そんなの決まっているでしょう。

たとえ意味が無くても理由が無くても進んでいく。だから行くんです。

未来、明日に...

なんてね。そんな柄じゃありませんよ。じゃっ、これで今日はおさらばです。

私の話、聞いてくださって、ありがとうございました。




そんな少女の、影に消えた物語。

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