▽ はじめまして、姉です。
今日は祝日、時間はお昼時を過ぎている為かポアロの客も数える程度。
そっと扉を押せば、ちりんと来店を告げる音が鳴る。
「いらっしゃいませ!おひとり様ですか?」
「はい」
「ではカウンターへどうぞ!いまお冷お持ちしますね」
可愛らしい店員の女性がパタパタとカウンターの奥へ入っていくのを見届け、奥側の席に着く。
ぐるりと店内を見渡し、スンっと香る珈琲の香りに口が緩むのを感じた。
パラリ、と手元のメニュー表に目を通していると先程の女性がお冷とおしぼりをセットしてくれたのでにこりと微笑んでホットコーヒーを注文する。
数分して直ぐに運ばれて来たカップにそっと口をつける。
美味しい。少し苦味が強めで後からふんわりとした砂糖などでは無い甘さがひらがり、鼻をすっと抜ける軽めの香りがとても飲みやすい。
もう一口、と口をつけたところでドアベルがチリンと音を立てた。
「只今帰りました」
「安室さん、お帰りなさい!そのまま休憩に入って貰って大丈夫ですのでゆっくりして下さい!」
「いいんですか?ではお言葉に甘え、て…」
ぴたり、と荷物をカウンターへ荷物を置きながら顔を上げた男は一点を見つめて文字通り固まった様に動きを止める。
その金の髪にぴったりな優しい青い瞳を大きくする開き、ぴくりと口元が動く。
「えへへ、来ちゃった」
透くん、と此方を見る男ー安室に対してふんわりと微笑む。
途端に安室は眉を下げてくしゃりと笑みを浮かべる。
「…まさか会えるとは思いませんでしたよ、姉さん」
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bkm