******** ちょっとおまけの左門さん家 ******** 「ところで、左門。最後って、どういうこと?」 「僕ら、もう会えないの?」 ぎゅっぎゅと抱きしめあいならが、大好き大好きと連呼する迷子たち。 それを前にしながら、ふと、二人が疑問の声を上げた。 まさかそんな・・という色が出ている声は、そう言えば二人は知らないんだったと思い至るもの。 「うむ、卒業したら、家業を継ぐ予定なのだ。」 二人にぎゅっぎゅと抱きついたまま、にかりと笑って、左門は口を開く。 それに驚きの目を向けているのは、数馬と藤内だけ。 他の顔ぶれは知っているのだ。 この相手がどこへ行くのか、どこへ帰るのか。 そして・・もう、どこにも行けない事も・・。 「家業って・・聞いてもいいの?」 「うーん、本当はいけないんだが、教えてもいいぞ。」 「ちょっと、左門。軽々しく言わない方がいいと思うよ。」 恐る恐る聞かれる数馬からの問いに、軽く答える左門を真っ先に止めたのは、何故か孫兵。 そして、それに続いて作兵衛が難色を示した。 「おい、左門、何言ってるんだ。」 咎めるように、その背に回していた手で、きゅっと髪を引っ張るが、左門はにこにこするばかりでどこ吹く風である。 そして、ゆるい声が、左門をはさんで作兵衛とは反対側から上がった。 「孫兵も作も、本人がいいって言うんだし、好きにさせてやったら?」 「お前なぁっ」 「だって、俺らの主は、左門になるんだろ?」 「うぐ・・」 「えっ!」 「そうなの!?」 ゆるいが、的確な言葉。 それに反論を出せずに、作兵衛は黙り、数馬藤内が更に驚きの声を上げた。 もう、今日は何に驚けばいいのか分からない。 「二人ならいいじゃん?」 「うむ、二人ならいいと思うぞ。」 「お前ら・・」 「楽天的すぎないかい?」 二対二の対立。 人数は一緒だけれど、どう見ても反対する二人の立場がとても弱い。 聞いちゃってもいいのかなと、はらはらしながら残り二人が見つめる中、何故かまた、左門はにっかりと、力強く笑ったのだった。 「だって、もし敵方にいても、敵にならないだろ?俺たちは」 絶対に、そうなんだと、心の底から思ってる。 「だよなー。敵になっても、なりきれないっていうか。」 忍びとしては失格かもしれないが、それでも、この学園でつなぎ合わせてきた絆は・・ 作兵衛も、孫兵も、互いを見た後、全員を見渡して、少しばかり、ばつの悪そうな顔をしてから苦笑を零した。 二人の言う事はもっともだ。 敵になど、なれるはずもない。 なりきれない。 自分だって、彼らと戦ったとしても、その命を取る事はかなわないのだから。 そんな孫兵と作兵衛に、にっかりと笑った後、左門はさっくりと言葉を口にした。 「僕は、実家に帰ったら、神様の一番傍に仕える事になるから、もう、家から出れないんだ。」 神埼の家。 大きな神を鎮め祭る一族。 卒業を目前に初めて知ったそれらに、なんだか、言葉が出なくて、二人もまた、左門にぎゅっと抱きついた。 「会うことくらいはできるよね。外に出られなくなっても、また、一緒に話せるよね。」 「あぁ、きっと大丈夫だ。」 ぎゅぎゅぎゅと集まる五人。 それを眺めていた孫兵と、ぎゅぎゅっと集まっている一部だった作兵衛の視線が合うと、作兵衛がお前も来れば?って顔をした。 きょとりと、瞬きをしてから、ふっと笑うと、孫兵もまた、左門に近づき、作兵衛と藤内も一緒にぎゅぎゅっと抱きしめた。 きっと変わらない。 終わらない。 続いていく。 彼らの絆。 戻る |