戴物 | ナノ


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ちょっとおまけの左門さん家
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「ところで、左門。最後って、どういうこと?」
「僕ら、もう会えないの?」

ぎゅっぎゅと抱きしめあいならが、大好き大好きと連呼する迷子たち。
それを前にしながら、ふと、二人が疑問の声を上げた。
まさかそんな・・という色が出ている声は、そう言えば二人は知らないんだったと思い至るもの。

「うむ、卒業したら、家業を継ぐ予定なのだ。」

二人にぎゅっぎゅと抱きついたまま、にかりと笑って、左門は口を開く。
それに驚きの目を向けているのは、数馬と藤内だけ。
他の顔ぶれは知っているのだ。
この相手がどこへ行くのか、どこへ帰るのか。
そして・・もう、どこにも行けない事も・・。

「家業って・・聞いてもいいの?」
「うーん、本当はいけないんだが、教えてもいいぞ。」
「ちょっと、左門。軽々しく言わない方がいいと思うよ。」

恐る恐る聞かれる数馬からの問いに、軽く答える左門を真っ先に止めたのは、何故か孫兵。
そして、それに続いて作兵衛が難色を示した。

「おい、左門、何言ってるんだ。」

咎めるように、その背に回していた手で、きゅっと髪を引っ張るが、左門はにこにこするばかりでどこ吹く風である。
そして、ゆるい声が、左門をはさんで作兵衛とは反対側から上がった。

「孫兵も作も、本人がいいって言うんだし、好きにさせてやったら?」
「お前なぁっ」
「だって、俺らの主は、左門になるんだろ?」
「うぐ・・」
「えっ!」
「そうなの!?」

ゆるいが、的確な言葉。
それに反論を出せずに、作兵衛は黙り、数馬藤内が更に驚きの声を上げた。
もう、今日は何に驚けばいいのか分からない。

「二人ならいいじゃん?」
「うむ、二人ならいいと思うぞ。」
「お前ら・・」
「楽天的すぎないかい?」

二対二の対立。
人数は一緒だけれど、どう見ても反対する二人の立場がとても弱い。
聞いちゃってもいいのかなと、はらはらしながら残り二人が見つめる中、何故かまた、左門はにっかりと、力強く笑ったのだった。

「だって、もし敵方にいても、敵にならないだろ?俺たちは」

絶対に、そうなんだと、心の底から思ってる。

「だよなー。敵になっても、なりきれないっていうか。」

忍びとしては失格かもしれないが、それでも、この学園でつなぎ合わせてきた絆は・・

作兵衛も、孫兵も、互いを見た後、全員を見渡して、少しばかり、ばつの悪そうな顔をしてから苦笑を零した。
二人の言う事はもっともだ。
敵になど、なれるはずもない。
なりきれない。
自分だって、彼らと戦ったとしても、その命を取る事はかなわないのだから。
そんな孫兵と作兵衛に、にっかりと笑った後、左門はさっくりと言葉を口にした。

「僕は、実家に帰ったら、神様の一番傍に仕える事になるから、もう、家から出れないんだ。」

神埼の家。
大きな神を鎮め祭る一族。
卒業を目前に初めて知ったそれらに、なんだか、言葉が出なくて、二人もまた、左門にぎゅっと抱きついた。

「会うことくらいはできるよね。外に出られなくなっても、また、一緒に話せるよね。」
「あぁ、きっと大丈夫だ。」

ぎゅぎゅぎゅと集まる五人。
それを眺めていた孫兵と、ぎゅぎゅっと集まっている一部だった作兵衛の視線が合うと、作兵衛がお前も来れば?って顔をした。
きょとりと、瞬きをしてから、ふっと笑うと、孫兵もまた、左門に近づき、作兵衛と藤内も一緒にぎゅぎゅっと抱きしめた。

きっと変わらない。
終わらない。
続いていく。


彼らの絆。




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