戴物 | ナノ


*三ろが仲いい話*
*というか、三年が仲いい話になってしまった・・*
*捏造神埼家設定が中心*
*年齢操作*
*卒業していく三年の話*























雪深い季節。
まだ雪解けは遠く、凍える季節。
彼らはまた、別れの季節を迎えた。

「先生方、お世話になりました。」

そう、其処此処で聞こえてくる別れの言葉。
深緑がまた、入れ替わる季節。
彼らが・・いなくなる日が、来たのだ。

「学園から出れば、現実はもっと厳しいぞ、気を引き締めなさい。」

厳しい言葉をくれる先生。

「鍛錬するのはいいことですが、体が資本です。怪我無きよう気をつけて。」

優しく気遣ってくれる先生。
さまざまに違う、最後の贈り物を刻みつけて、彼らは、気がつけば、同じ場所に集まっていた。

「お、孫兵」
「やあ、作兵衛」
「ん・・は組も来たぞ。作」
「お〜い、みんな〜」

六年長屋の、何故かろ組に割り当てられた場所に、そろって集まる自分たちの行動に、彼らは小さく苦笑した。

「おいおい。卒業の日だって言うのに、同じ組の奴らはいいのかよ。」

作兵衛がくしゃりと笑うと、みんなも笑う。

「まぁ、これが日常だもんね。」
「狭い部屋なのに、よくこんな人数で集まるよ。」

藤内が言えば、まるで他人事のように三之助が言った。
お前もだろと、作兵衛が突っ込む中、数馬のやわらかな声が、笑いながらも嬉しげに言葉を紡いだ。

「みんなの事が一番好きだから、しょうがないよね。」
「うん、俺もそう思う」

同意する孫兵の声は、涼やかだ。
が、所で・・と、その声が続いた。

「左門はどうした?」
「・・・・・・・え?」
「うそっ」
「ほんとだ・・いない・・・」

孫兵の言葉に、さっきまでの和やかな空気は一変。
は組と作兵衛はあせったように周囲を見渡した。

「こんな日まで、保護しきれないとは・・」
「うるせー!さっきまでは此処にいたんだよ!」
「え、何?左門ならさっき、あっちに行ったけど?」
「おまっ三之助!気付いてるなら止めろよ!!」

バタバタと動き始める五人をたまたま見かけた同級生たちは、苦笑しながらそれを見送る中、三之助が指差したのとは逆の方向へと、全員が駆けて行ってしまった。

今日は最後の日だった。

最後の最後、自然と集まった六年ろ組の、三人部屋。
日常がそこにはあった。
勝手に集まって、勝手に騒いで、勝手に帰っていって。
たくさんの思い出がある場所。
左門の居なくなったという方向から作兵衛が推測し、こっちかもしれないと、指差す方向へ全員で駆けていくことも、今ではもう、普通の事。

「ったく、最後の最後まであいつはー!」
「まぁまぁ、三之助だけでも残っててよかったじゃない。」
「ま、仕方ないね。あの一直線馬鹿は」

六年間、治らなかったなと思いながらも、それが嬉しい何て、最後の最後にそんな事思うなんてなぁと、作兵衛は誰にも気づかれないように小さく苦笑した。
雪の残る山の中に分け入って、一端全員で周囲を探してみると、藤内の声が木々の間から上がった。

「みんなー!こっちだ!!」

そこには、雪の上にくっきりと残った、左門の足跡。

「おっしゃ、面倒だけど、こういう時だきゃ雪に感謝だな!!」

ぐっとこぶしを握る作兵衛に、うんうんと頷いて、また全員でそれを追って山へ入っていった。
突然進路変更するその足跡は、正に左門の駆け抜ける様そのもの。
そうして、突然木々が途切れたかと思うと、山に少しせり出した崖に、でんと立っているうしろ姿があらわれた。

「左門!」

五人が駆けよれば、きょとりとした顔が振り向いた。

「お、何だ、みんなも来たのかっ」

にかりと、笑う無邪気な顔。
このばか!と、言ってやりたかったけど、みんなを一通り見た後に、左門が何故か崖の向こう側に視線を戻すから、そのタイミングも失った。

「何見てんだ〜?」

そんな作兵衛を置き去りにするように、三之助が鼻歌でも歌いそうな軽さで、左門に並び、同じ風景に収まっていった。

「うむ、最後だからな。」
「おぉ、なるほどなぁ。」
「え?何が見えるの?」
「最後って??」

と、二人のやり取りに興味津々で、数馬と藤内が駆け寄っていくが、ちょっとまてと、孫兵が数馬の襟首だけ捕まえて引きとめる。

「え、何?孫兵」
「数馬は危ないから、歩いて行きなよ」
「・・・孫兵、ひどい・・・」
「本当の事だよ。ほら、行こう」

そうして、五人がその崖のふちにとまる。
青空を背景に並ぶ五人の背中。
それを見守りながら、何だか、不思議な気持ちに作兵衛はなった。
今日で、最後だ。
学園も、この五人でいることも。
そんな日常は終わり。
胸にせりあがるこの気持ちを・・何と言えばいいんだろう。
そう、胸の上を抑えるのと同時に、左門と三之助が振り返った。

「ほら、さくべーもこいよっ」
「何やってんの。」

差し出される両手は、そんなの、俺の役目だろって、文句が、勝手に胸の中にあふれて。
でも、たまには許してやるよって、勝手に納得して、苦笑しながら作兵衛はその手を握ってやった。
ぎゅっと握られる手。
その普段通りの光景に、藤内が苦笑すると、数馬もほっこりと目元を綻ばせて、くすくすと忍び笑いを零した。

「ったく、左門、勝手にいなくなるなよな。心配すんだろ」

しっかりと、そこだけは小言を零して。
とんっと、二人よりも半歩ほど後ろの、崖のさきっちょにたどり着くと、その下には、忍術学園。
広い敷地に並ぶのは、六年間お世話になってきた教室や、長屋や、演習場。
かけずり回った裏山も見える。

「最後だからな、全部、見て、刻んでおきたくてな。」

左門を見ると、にかりといつものように快活に笑おうとしている顔があった。

「もう、見ることもかなわないだろうからな。」

その言葉は、ほんの少し、突き刺さるように、作兵衛の胸に落ちてきた。
左門にとっては、本当に、本当の、最後なのだということが、何だか寂しかった。
自分や三之助なら、きっと、ごく稀だけれど、また、来ることは叶うだろうが、左門はこれが最後。
作兵衛は、たまらなくなって、半歩後ろから、ぐいっと、左門を引っ張った。

「うおぉっ」
「ぎゃあぁっ!」

唐突なその行動に、左門は叫び声をあげ、隣にいた藤内が、驚きに、やはり叫んだ。
さすがに崖のふちに立っているのだ。
もし落ちたらと思うと怖い。
そうして、叫びながらも、左門は作兵衛にどしーんとぶつかった。

「作兵衛?」

びっくりしたまま名前を呼ぶと、いつの間にか繋いだ手を離していたらしく、作兵衛の腕が、左門をぎゅっと抱きしめる。
作兵衛からの言葉はない。
もしかすると、出ないのかもしれない。
ぎゅうぎゅうと抱きしめる作兵衛と、疑問符を浮かべるばかりの左門。
そこに更に、するっと三之助までもが加わって、ぎゅうっと、二人が左門を抱きしめた。
その行動の意味が分からずに、目を白黒させるは組の二人と、そんな数馬の横で、何かを知っているらしい孫兵は、一人、複雑な笑みをそっと浮かべる。

この、学園という箱庭においてのみ自由だった少年。

「必ず、俺たちで左門を護ってってやるから。」

自分のために、不自由な身を嘆いてくれている。
その事に気がついて、左門は、ゆっくりと顔をほころばせ、ぎゅうと、二人を抱きしめ返す。

「おうっ!二人とも、大好きだ!!」

叫ぶ左門の返答は、あまり会話としては繋がっていないような気もするけれど・・。
作兵衛言葉の意味も分からないけれど。
ぎゅいぎゅいとくっつきあう三人の光景は微笑ましいもので。
きっとずっと、三人はこうなんだろうなと思うと、藤内も、数馬も、なんだかとても嬉しくて、ちょっとだけ涙が出そうだった。


僕らは卒業してしまうけれど、きっと変わらない絆もあると、三人が教えてくれているような気がする。




鈴鳴廊の秋華様より頂きました。


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