「なんじゃ、ヘムヘム」
学園長は、差し向かいでお茶を飲みながら、目の前のヘムヘムに声を掛けた。
「…ふむ、確かに、あの排他性は厄介じゃからの」
今までは、あの「排他性」に踏み込むのは「先輩」の専売特許であった。 しかし、次に庭の桜が散る頃には、あの「排他性」に踏み込むことが出来るものがいなくなってしまう。 かといって、「大人」を最も敵対視している彼らの中に、今更教師が踏み込むことも出来はしない。 …実習生ならもしくはと思ったものの、「半端な無知」は「年齢」よりも敵対視されることは今回の件で実証済みである。
「大化けするであろう彼らでなければ、あれには踏み込めまいて」
一つ下では、人数的に心もとない。 だからこそ、あの「は組」を無理やりついて行かせたのだ。 いざというときは、は組が「排他性」に踏み込めるように。 手負いの獣達のストッパーとなれるように。
「その為には、まず、知らなければな」
手負いの獣の恐ろしさと臆病さを。 何より、どうやったら止められるかを。 だからこそ、まだ期限を半分以上残していることを知りながら、滝夜叉丸達に様子を見てくるように命じたのである。
「全く、厄介な者達を残して行ったことよ」
彼らの中に芽吹いた、あの「排他性」を育てたのは、明らかに彼らの三つ上。一昨年の卒業生。 そしてその一つ下が、あの「排他性」を個性として認め、守り続けた。 彼らに隣り合う二つの学年は、最早あの「排他性」を当たり前のモノと思ってしまっている。 止めようと思えば、「大人」の力を持ってすれば、それを止めることが不可能であったわけでもない。 それでも、それを止めることが出来なかった、しなかったのは自分の采配の結果。後悔するつもりもなかった。
「あやつらは、どんな『忍』になるんじゃろうの」
忍びの技は教えられる。 生き延びる方法も、息の根を止める方法も、「どんな忍」が重用されるかも けれど、理想の忍び像は人それぞれ。 だから、彼らの望むような忍になるべく、それを達成する為の手段として忍術学園はあるのだ。 目指すところが同じようで違っている忍たま達の将来は楽しみではないか。
往年の天才忍者は、目の前の忍犬と笑い合った。
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