シリーズ | ナノ

それは入学して、半年ほど経ったある日のことだった。



突然足を止めた伝七に、セブルスもつられて立ち止まった。

「どうした」
「…罠が」
「罠?」

訝しげに目を細め、廊下を見渡す。
二、三人で固まりながらお喋りに花を咲かす女子達、互いをどついてふざけ合いながらげらげらと笑う男子達。時折すぅっとゴーストが漂えば小さな悲鳴が聞こえる。
見慣れた、何気ない光景だ。
一目では分からず、もう一度注意深く探り―――ある一点で止まった。

「あそこか?」
「ああ」
「解くのか」
「…まぁ、精々悪戯程度のものだから放置しておいても問題はないんだが…」

語尾を濁らす彼女にセブルスは眉を顰めることで話を促す。

「いや、…低レベルすぎて寧ろこんな可愛らしいの久々に見たな、と」
「……ああ」

ふっと遠い目をする彼女に、以前聞いてしまった同級生からの虐めというか殺戮も同然な仕打ちの数々を脳裏に思い浮かべ、即座に消す。
駄目だ、思い出すだけでも恐ろしい。
幼馴染な二人は見事に揃って身を震わせた。


そうして仲良く背筋を凍らせた後、取り敢えず、と仕掛けへ歩を進める。
前世のえげつない罠・からくりに慣れた伝七にとっては玩具にもならないくらいのものでも、耐性の無い他者には充分罠と称するに値するものだからだ。
妙な視線が気になるが何もしてこないし問題は無いだろう。
それに、無駄にあちこちに余計な物があると、ただでさえ苦労しているというのに留三郎と作兵衛の精神に負担がかかる。
セブルスすら見つけられたんだ、もうホグワーツを制覇していて尚且つその手のプロである用具委員が見過ごすわけがない。
因みに、同じ用具でも平太はこういうレベルだったら平気で放置するので慰労の対象にはならない。

「………」

一通り観察し、これなら手を使わずとも魔法で解けると思って取り出した杖を振る。
するとそこは仄かに発光して、瞬く間に治まれば解除は完了。
二人は何事も無かったように再び昼食へと向かった。






「「「「………」」」」

―――そんな一部始終を盗み見ている影が四つ。
言わずもがな伝七が察した“妙な視線”のものであり、ホグワーツに広く名を知れ渡らせた四人組―――通称悪戯仕掛け人である。
彼らは、いや彼らの実質ツートップは愕然としていた。

「……なにあれ…」
「…んだよあれ…」
「見事に解除されちゃったねぇ…」
「呆気なかったね」

のほほんと言葉を零すリーマスとピーター。
すると前衛二人から突如、轟、と炎が燃え盛った。
それを見て後衛二人は顔を見合わせる。

また一騒動起きるな、と。

苦笑したのであった。



これが一応悪戯仕掛け人との始まりのきっかけ。

11/03/22.


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