「とーないー」 「何、さんの…またか」 「おー」 呼び掛けに振り向いた藤内は、三之助がずるずると引きずってくるそれに溜息を吐いた。 うんざりとした態度を隠そうともしないままにカートの蓋を退けて中に入れるよう視線で促す。 そこへ乱雑に投げ入れたのを見届けてからしっかりと蓋をした。 「お疲れ。にしても最近多いな…」 「あれだろ、ぇえっと何だっけ、…何かのパーティーが近いからだろ?」 「処分するこっちの身にもなれよ…」 「なー。…あ、作は?」 「まこの身支度」 慣れた手つきで押していくスイッチの意味は、彼女が何の躊躇いもなく行うものだからこそ聞くのも恐ろしい。 未だ謎な藤内のカートにさして興味のない三之助もまた理由を問うこともなく、全く別の話題で小首を傾げれば端的な応え。 それにくるりと踵を返した彼の襟刳りを容赦なく掴んで引き止めた。 「何処に行くつもりだ?」 「?作んとこだけど」 「……。…まこの部屋は真逆なんだけど」 もう一度深く溜息を吐いた藤内は、あれ?と目を瞬かせる三之助の腕を取って歩き出す。 大人しく連れていかれる三之助を一瞥したら、ふと思い出したようにその口が開いた。 「そういえば、正門の方で何か左門が金髪の女と喧嘩してた」 「…は?」 金髪。女。喧嘩。 正門まで行ったのかという指摘は後回しにして、キーワードを基に人物像を描いていく。当て嵌まったのはたった一人だった。 あの人が来ているのか。 「その人は多分、田村三木さんだと思う」 「田村三木?」 「左門の元先輩だよ」 「ふぅん…」 あ、興味ないな。 カートはファンタジー設定。 三はの拷問部屋へと直通してる。 11/04/03. ← (7/7) |