三郎次はギリッと親指の爪を噛み締める。 初対面の折から何かと嵩に懸かられた故の不快感と対抗心。当時最も尖らせていた生意気さが原因なのだろうが、上等と応えた奴も奴で、その程度にはまだ子供だった。 …だというのに、先程の奴は何だ。 傍らに隙なく佇み、瞼を伏せた面差しは見違えるほど大人で、その瞬間まで三郎次が見てきた顔は始めから無かったように影すら掴めない。 ―――今までのものが、形骸でしかないのだとでも知らしめるように。 同じように控える“親友”達もまたそうであるが当然として物静かに沈黙を貫き、獣染みた殺意を隠さない者もいたほどだ。 それがどうしようもなく腹立たしくて、三郎次は手荒に扉を閉めてやたら開放的な回廊を靴音高く駆け抜けた。 このシリーズは作兵衛←三郎次がデフォです。 11/04/03. ← (4/7) → |