「作、」 「畏まりました」 短く命じたまこに作兵衛は頭を下げ、静かに身を退けた。身辺警護は一瞥交わした左門に任せ、素早く踵を返す。 長年の日課により培った脚力で駆ける彼を、幾つかの眼が捉えては興味を無くしたように他へと向き、いつもと変わらない蠢動へ戻っていく。 そんな気配を全身で注意深く感じながら回廊に面した庭園へと降り立った。 様々な生物の気配と静謐に満ちた森の気配を探る。この美しい自然の中に不審なものが紛れ込んでいまいかどうか。 鬱蒼たる私有地に密林との共存を現す区画は主が望み、主の両親が叶えた結果の宮。有毒生物の宝庫といっても差し障りないこの場所で幾つもの不審物が闇に消えたか計り知れない。 そんな荘厳で獰猛な楽園を横目にふっと逡巡する。 …そういえば、主が最も寵愛しているあの蛇は何処だろうか。常に覆い隠されている首周りは晒されていた。 時折試すようにいなくなる艶やかな紅を、文字通り泣きながら捜すのであろう主が容易に想像できて、瞬時に逃亡経路を描き出しながら考える。 まこの家は…取り敢えず和洋入り混じったな豪邸です。 11/04/03. ← (2/7) → |