ss | ナノ


飛んできた鉄拳をバシッと掌で包み込み、ぐぐっと力を競らせつつ若干負けそうになりながら、空いた片腕で作兵衛の腰を引き寄せた。
向こうも慣れたようでバランスを崩すこともなく、寧ろ反動を利用して彼のもう片方の拳が唸る。
その時、本当に、うっかり。
睨みつけてくる瞳の獣のようにギラついた光に、血に滲む唇での不敵な笑みに、目を奪われてしまった。

結果、負け。



(…おい、三之助)
(んぁー…?)
(何気ぃ抜いてたんだよ、らしくねぇ。うっかり殺しそうになったじゃねーか)
(あー、うん。さくべ−の色気に負けた)
(はぁ?馬鹿にしてんのか?)
(まさか)


ぜんぶ本音だよ、
嘘なんか吐かないよ。








…殺されたいな、なんて。



超短いです。
これは一応完成品。
取り敢えずかっこいい作兵衛が書きたかった。

11/04/23.