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「ね、さく」
「…んだよ」
「それはホント?嘘?」

嘘なんか見抜かないよ、信じることしかしたくない。
作の言い分は全部鵜呑みにしたいけど、でもそうしたら作は苦しんじゃうんだろ?

「言ってくれなきゃ俺、わかんない」
「っ……」

耐え切れないように作兵衛が目を逸らしかけ、しかし一秒ほどの間もなく戻った双眸が三之助を射抜く。
睨められた三之助は、きゅっと垂れ目を細め、親しい五人しか見たことがない嬉しげな様子で彼を抱き締めた。
いつもなら抵抗するのに、存外素直に背へと回される腕。身体が軋むんじゃないかと思ってしまう力一杯のそれにますます幸せになる。

「…おい、三之助」
「んー?」

肩口に懐いていた顔を上げた。身体を密着させたまま顔だけ互いを見遣る。その距離すら近い。
そして、真っ直ぐに見据えてくる鋭い眼の奥に燻る自分を求める熱を否が応でも気付かされて、三之助は頭の芯が蕩ける。

「お前は、…」

言い淀んで、何か悪戯でも思い付いたように一笑した、その意地悪さに胸が高鳴る。
かっこいいなぁ、と人知れず甘い吐息を漏らすほど、三之助の全神経は作兵衛に支配されていた。
自分より背が小さいけれど、とんでもない妄想に暴走するけれど、口が悪くて仏頂面ばっかりだけど、いつだってかっこいいんだ、俺達の作は。
離れたら捜してくれて、必ず見つけ出してくれて、紐でも縄でも手でも縛ってくれる。片時も離れたくないからこそ、その束縛が心底嬉しい。

「さく、大好き」
「…好きなだけか?」

淡く含み笑う作兵衛がこんなにも脳髄を惑わせる。
女みたいに胸もないし柔らかくない身体でも、受け入れられるところはあるし、何よりこんな視線を注いでくれるなら。何にでもなっていいとすら思える。
そんな盲目的な求愛を、重いと疎まず、怖いと怯まず、全身全霊で応えてくれる、応えられる男なのだ。

「…愛してる。必要であれば、全部捨てられるよ。逆に全部背負ってもいい」

俺を壊すモノが欲しい。
色々なものを直す役割は捨てて、俺だけを壊して。
俺達だけの特権にもう一つ、“俺だけ”を入れて。

「言うじゃねえか」

低く喉で笑う作兵衛は、片腕を動かし楽しげに三之助の衿元を引き寄せる。
重なった唇は炎のように熱かった。



面倒見いい男前×どうしようもない甘えん坊って萌えませんかね?

11/04/04.