→休み時間、1年の教室にて
――ガラガラッ
「よ、宮野」
「あ、ちす、ザキさん。どーしたんスか?」
「椿に用があんだけど…いるか?」
「あー…今ちょっと取り込み中っていうか…あそこなんスけど」
そう言って宮野が指差した先には、1年女子の輪の中でキョドっている椿の姿が。
きゃあきゃあと黄色い声が飛び交う中で戸惑った表情を浮かべた椿が頻りにこちら側に視線を寄越しているのは、きっと宮野に助けを求めているんだろう。
「女子に囲まれて何してんだ椿の奴」
「休み時間になった途端に呼ばれてずっとあんな感じッス」
「なんかこっちチラチラ見てるけど、助けてやんねーのかよ」
「…大体予想付くんスよ、何言われてるか。だからまぁ別にいいっかなぁなんて思ってるんスけど…」
「宮野が良くても俺には用事あんだよ、わりぃけど呼んでくれ」
「ウス。おーい椿ー、ザキさん呼んでるー」
宮野の声がざわついた教室を一蹴するかの様に響き渡る。
一瞬だけしんと静まり、椿の「あっ、俺、行くね」という小さな声の後、再び教室内には先程までと同様のざわざわが戻っていった。
女子の輪から駆け足でやってきた椿は、未だに戸惑いの余韻を引き摺っているのかそわそわと落ち着かない。
「ちす、ザキさん、あの、何かあったんスか?」
「何かあんのはお前だろうが、女子に囲まれて何してたんだよ」
「えっ、あー…なんか、変な事聞かれたんスけど、何て言ったらいいかわかんなくて」
「何聞かれたんだよ?」
「ミヤちゃんとのことばっかりなんスけど…いつも一緒に帰ってるのは何でとか、ミヤちゃんのどういうとこが好きとか、ミヤちゃんだけなんでそう呼ぶんだとか…」
「何だそれ」
「俺もよくわかんないッス、メモしてる女子もいて…理由もわかんないし何か怖かったッス」
「あぁ、そういや宮野さっき理由がわかるとか言ってなかったか?」
「ウス、何となくッスけど」
「え、知ってるの?」
「一昨日くらいに女子の団体に聞かれたんスよ、椿はただの友達なのかって。だから友達以上だなって言ったら、なんかスゲー悲鳴挙げて走り去ってって。後々噂で聞いたらなんか俺と椿にホモ疑惑が浮上してるらしくて」
「はぁ!?ホモ!?」
「だから次は椿にそういうこと聞いてんのかなーって思ってたッス」
「有り得ねぇだろ、普通に」
「そうッスよね、でもかなり黒に近い感じで疑われてるらしいッス、俺はあんまり気にしてないんでいいんスけど…まぁ改めて考えると俺の言い方もまずかったのかなーって」
「確かにな、でもあれだろ?親友とかそういう意味だろ?友達以上って」
「ウス」
「普通に考えりゃわかると思うんだけどな…まぁ、大変だったな、椿」
「ウス…ノートに描かれてた俺とミヤちゃんの変な絵も見ちゃったッスけど、早く忘れるッス」
「変な絵?」
「どんな絵?」
「…(´・ω・`)」
「あー…いいや、それは言わんでいい、まぁあれだ、お前ら二人とも彼女作る事だな」
「ですね、サッカーが恋人って言っても余計に煽っちゃいそうッスよね」
「俺はサッカーが恋人でいいッス…」
「あれ?そう言えばザキさん、椿に用事あったんスよね?」
「っ!そうだ!椿じて――キーンコーンカーンコーン
「あー!?やべぇ!!椿っ!古語辞典!貸せ!」
「あ、ウス!」
end.
1年(腐)女子の間でミヤバキ疑惑が浮上中(^p^)
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