夏と夕日と甘い二人A


「あ、監督っ、あ、あう」

「椿は、甘くてしょっぱい」

殆ど裸同然にはだけた浴衣は帯に僅かに引っ掛かっているだけで、監督が俺を揺さぶる度にさわさわと一緒に揺れた。
監督は汗でべっとりと濡れた俺の首筋から胸にかけて舌を這わせると、いやらしくニヤリと笑う。

(浴衣のせいかな、何か、いつもより、ドキドキする…)

俺と同じくはだけた胸板は汗でしっとりとしていて、額には汗粒が光り時折それが顎を伝い俺の頬へ落ちる。
甘くて暑い熱とじわじわと監督が与える刺激でぼんやりと霞む思考は、もうまともに働かなくなってしまったのだろうか。
まるで何かが乗り移ってしまったかの様に監督へと不意に伸ばした手は監督の額に張り付いた柔らかい髪を掻き上げ、そして徐に頬を滑る汗を舐め取っていた。

「椿、煽ってんの?」

「ふ、え?俺、あ、あっ」

「まさか無意識?…本当、これだからお前は」

はぁっと息を吐くように盛大に溜め息を漏らした後、監督は「椿のせいだからな」と耳元で息を吹き掛けるように囁くとぐいっと大きく腰をグラインドさせる。
その瞬間チカチカと目の前も脳内もスパークして、下半身をもろに直撃する甘い痺れに俺は背筋を弓形に仰け反らせた。
喘ぎ声を溢して気を紛らわそうと口を開くも瞬時に監督が噛み付くように塞いでしまう。
臀部を穿つ水音とちゅっちゅっと唇や舌先を吸われる音に聴覚も次第に麻痺していき、身体中に滞った快感はとうとうキャパシティを越えたのか、俺は熱と快楽の波に飲まれるまま意識を手放した。



* * *



「暑い」

「…暑いッスね」

「考えもんだなこれは、セックスするにも流石に暑すぎだよなぁ」

後藤にクーラー付けて貰うかと呟いた監督はジャージだけを履いた恰好でカップアイスを頬張る。

「でもたまには良いよな、どろっどろになるセックスってのも、な?椿」

「え!?、あ、ううっ」

「お前が熱さに弱いってのもわかったしな」

いやー若さってのは本当凶器だなと言って、ニヤリと悪いことを考えている時の笑みを浮かべる監督。
身体を繋げた後なのにこんなにもリラックスしている監督は流石だと思う、俺なんか監督の顔をまともに見れないのに。
況してや行為中に思わず自分がとってしまった誘うような行動をばっちり記憶してしまっているから、もう恥ずかしすぎて逃げ出して仕舞いたいくらいだった。
その事を知ってか知らずか監督は意地悪な笑みを浮かべたまま「椿もしょっぱかった?」と聞くものだから、俺は赤面した顔を隠すようにベッドの上で踞るしかない。

「椿、耳真っ赤」

「そ、それは、か、監督がっ!」

「ん?俺が何?俺何かしたっけ?」

「う…な、何でも無いス…」

真顔で白々しいことを言って、本当、二人きりの時の監督は意地悪だ。
俺なんかすっかりほだされちゃったのか、何だかんだで監督の自由気儘で余裕綽々のところや、セックスする時にだけ見せる切羽詰まった雄の表情に、その都度チキンなハートを射止められてしまっているっていうのに。

「…監督、ずるいッス」

かっこよくて。
大人で余裕で。
俺ばっか好きにさせて。

(本当にずるい!)



end.



10000打記念短文第3段はタツバキ×浴衣プレイでしたー!

シチュエーション無理矢理だけど気にしない!←
だってこの二人で夏祭り行くの何だか想像出来なかったんだもの…^^;

今回は大人な色気に翻弄される青いバッキーでした^^
ほんわかエロ…できたかな?

それでは皆様!
10000打感謝です!m(_ _)m

2011.08.24

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