教えて★清川せんせー


今朝方、珍しく堺さんからいきなりメールが送られてきた。
件名無し、本文無し。
新手の若手いびりか?っつーか俺はもう若手じゃないんだけど…と思いつつよくよく見てみると何やら添付データがあるらしく、エンターキーを押すと3つの画像データが飛び出てきた。
と同時に携帯電話のディスプレイいっぱいに映し出された写真たちが目に入る、その内容は言葉なんて忘れてしまうほど衝撃的なものだった。

「……」

驚きを通り越し更には怒りすら凄いスピードで追い抜いて最早唖然、呆然、無。

(ガミさんと、世良がキス…?)

ガミさんのだらしなさと適当さと即物的な所は長年の付き合いと経験で重々にわかっちゃいるが、だからといって恋人がいるチームの後輩とベロチューはどうなんだ。

(堺さん絶対に怒ってるよな…)

無言のメール本文から伝わる「石神をなんとかしろ」と言う堺さんの言葉。
本来なら恋愛のみならずプライベートでいざこざやトラブルがあってもそれをサッカーやチームに引き摺ることなど絶対にしない超ストイックな堺さんが、直接俺にこんなメールを送ってきたという事は、きっと堺さんの逆鱗に触れてしまったんだろう。

(っつーか堺さん俺だって結構傷つくんですけど!?)

それほど堺さんの忠犬を汚した罪は大きいという事、なのか。
まぁ俺だって男だし、いつまでもガミさんに振り回されっぱなしってのもイラつくし、今回のは相手が世良で後輩ってのもあり地味に腹が立つわけでありまして。

(いつまでも自分勝手に出来ると思われちゃ癪だし、一度しっかりと懲らしめる必要があるよな?)

…二度と俺以外に余所見なんか出来なくしてやる。
そう内心で決心した俺は、ガミさんをギャフンと言わせるにはこの人しかいないと思いつくままある人に電話をかけた。



* * *



「え、あの、大事なことだからもう一度聞くけどさ、これってご褒美じゃないの?清川くん」

「お仕置きッス」

「いやいやいやいや、お仕置きになって無くね?俺今かなりギンギ「誰が何と言おうとお仕置きッス」

戸惑うガミさんを目の前にしてフンと腕を組みふんぞり返る俺。
ワインレッド色の超ミニスカ女物スーツを身に纏い黒フレームの伊達眼鏡をかけた俺は、両手を後ろ手に拘束されソファに座らされたガミさんを見下ろしニヤリと口角を上げた。

(流石堀田さんと丹さんのアイデア、ガミさん早速反応してる)

端からはきっと万人が顔をしかめるような絶賛変態プレイ中に見えるだろうけれど、生憎二人きりのこの部屋では世間の目なんて心配はいらないし、そもそも今まで勝手気儘にリードを引かれるだけだった俺とガミさんの関係を覆す絶好のチャンスなんだ、見す見す逃すのは絶対に嫌だった、男として。
最初堀田さんと丹さん監修の対ガミさん用お仕置き大作戦を提案された時はそれはそれは大いに後悔をしたけれど、まさかガミさんがこんなにもガッツリ食いつくとは思わなかったから、あの時の二人の言葉とそれに意を決してコスプレに踏み切った俺に拍手だ。
でも、それでも。

「じゃあ、い、石神くん」

「は…?どうしたの清川?」

「清川じゃなくて、清川先生、です」

「えー何清川ー何で今日はノリノリなの?俺やべーよ鼻血でちゃう」

「先生と、よ、呼びなさい…じゃあ、えと、ほ、保健体育の授業を始めます」

この堀田さんと丹さんが考えたシナリオ通りに演じるのはコスプレなんかより、もっともっとメンタル面のダメージが大きいんだけれど。



* * *



作戦その1.ガミさんを本気にさせる

「えっと、まず、失礼します」

そう言ってソファに座ったガミさんの膝の上に対面になるように腰掛ける。
足を跨いだ事で必然とたくし上がるミニスカートを慌てて押さえつつ上目でガミさんを見ると、何ともだらしなく緩んだ表情を浮かべていた。

「うわーパンストも穿いてたんだ…清川先生エロいです」

「ま、まぁ、先生ですから」

「ね、もうちょっとだけスカート捲ってくんない?もうちょっとで奥見える…」

「駄目です」

「えー何でよ!捲りたい捲りたいー手ほどいて下さいせんせー!」

「石神くん、駄目と言ったら駄目です」

何で!?と必死に訴えるガミさんの目がうるうると子犬の様に哀願するけれど、その訳がスカートの奥を見せてくださいというのは良い年したおっさんが如何なものなのかと思う。
まぁガミさんのは早速勃ってきてるみたいだし作戦遂行の為にももうちょっとだけ煽っておこうかと、然り気無く片膝を立ててみた。
多分ガミさんの目にはギリギリでスカートの中が見えるかどうか。
パンティまで穿いちゃってる事にはきっと気付かないんだろうな。

「うわヤバイヤバイ!縫い目見えた!っつーか俺もう発射準備が着々と整いつつあります、清川先生」

「我慢して下さい」

「あー今すぐこのパンスト手で破って清川先生ん中ぐちゃぐちゃに犯したいんだけどどうしよ?」

「し、知りません!っつーかその発言はセクハラッスよ!?」

ギラギラと目に見えて欲情の色を浮かべるガミさんの真剣な瞳を見つめ返すことが出来ず、逃げるように俺は視線を空中でさ迷わせる。
何かこっちまでドキドキしてきた…なんてこれじゃ何時もと一緒じゃないかガミさんを飼い慣らすんだろ俺!と、改めて気を引き締め次の作戦が書かれた紙をポケットから取り出す。

(作戦2からは一発本番って言ってたけど、本当に大丈夫なのか…?)

ただ作戦の通りに実行すれば絶対に大丈夫だからと強く二人に言われていた俺は、未だあーだこーだ言って身を捩るガミさんを他所に、緊張の面持ちで四つ折りの紙を開いた。

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