酸いも甘いも、全部ぜんぶA


「う、ふぅ、うあ、あっ」

ブィーンと器械音をたてて俺の体を意図も無しに犯すのは、堺さんが持ってきたピンク色のごつごつしたバイブ。
そいつはリモコンの遠隔操作によって、ピンポイントを捉えながら小刻みに振動することも出来れば全体を犯すように激しくグラインドも出来るという幾つかの機能を持つバイブの様で、特に優れているのが射精機能だという。

「しゃ、せい?って、あうっん、う」

「リモコンのボタン一つで、バイブん中に予め入れておいた液体が先っぽから噴出されんだと」

「え、液体って、何、っすか?」

「何お前、中出しして欲しいのか?コイツに」

そういってグイっとバイブを押し込まれた。
日本人のチンコじゃ到底届きそうもない内蔵の奥を遠慮も無しにガツガツと抉るバイブに体を揺さぶられ、涙が目尻を伝って落ちる。
涎も垂れ流し、開いた口からは呻き声の様な喘ぎ声がひっきりなしに零れ落ちて、俺の体は壊れてしまったのかガクガクと痙攣しっぱなしだ。

「さかさっ、もう、やあ、う、あ、ああっ」

「これで何度目の射精だよ、淫乱」

「ごめっなさ、あ、まだ、動かさな、ひゃあ!、あ」

「じゃそろそろ射精させてみっか、お望みのようだし」

「やだやだやだ、さかさっ!」

堺さん以外に中出しされんのなんか嫌ッス!
そう言いたいのに開けられた口からは喘ぎしか出てこなくて、結局俺は涙でベタベタになった顔を堺さんに向けたまま、唸るバイブから勢い良く発射された訳のわからない液体を体内に受け入れるしかなかった。
瞬間的にじゅわっと体中に広がる熱い液体。
それは何度も射精して力を無くしていた俺のチンコをみるみる内に復活させてしまう。
まさか、これは。

「媚薬、廻ったみたいだな」

「ああっあ、熱い、あんっあ!さかいさっ!」

「バイブ美味いのか?さっきよりすげーよがってるけど」

「あ、あ、あっん、ああ」

やだやだやだやだ、こんなの。
何で目の前に堺さんがいるのにバイブに犯されなくちゃいけないんだ。
全然気持ち良くないし、全然満たされない。
お仕置きだってのはわかってるけれどやっぱり堺さんが欲しい、その大きな掌で、甘い唇で、熱い眼差しで、堺さんの全てで俺を抱いて欲しい。
そう願わずにはいられなくて、媚薬で蕩けた思考はもう堺さんでいっぱいに埋め尽くされてしまった。

「堺さんが、いいっ、堺さん、ああっこんな、やだぁっ」

「石神でもいいんだろ?」

「いやだっ、堺さんじゃないと、う、ふあっ、あ、あ、堺さんしかっ」

「俺しか、何」

「堺さんとじゃ、ない、とっ、一緒が、いいっあ、あふ」

堺さんと一緒じゃないと心も体も気持ち良くなれないッス。
そうたどたどしくも何とか紡いだ俺の気持ちは堺さんに届いたのだろうか。
堺さんは相変わらず怖い顔をしたままだったけれど、バイブに揺すられる俺の汚れた体を気にせず抱き寄せてわしゃわしゃと頭を撫でた後、

「日本語喋れよ、馬鹿」

と言って少し乱暴に唇を塞いだから。
きっとほんのちょこっとは俺の気持ちが伝わったんだろうな。
なんて思って、俺は口内に差し込まれた堺さんの舌先に応えようと、手錠のかけられた腕を精一杯に伸ばした。



* * *



「で、結局何だあの写真は」

「えっと、俺…わかんないッス」

「はぁ!?」

「す、スイマセン!記憶に無いッス!どうしても思い出せなくて」

「石神とキスしてチンコ触らしてんのに?手錠までかけられて」

「え?この手錠堺さんがかけたんじゃ」

「俺にそんな趣味はねぇ」

「??」

堺さんの話によると、昨夜遅くに酔っ払った俺を引き取って欲しいと丹さんから電話が来たからしょうがなくガミさんの家に行ってみると、べろんべろんになった俺をガミさんが介抱していたらしい。
そん時の俺は既に衣服が乱れていて手錠もかけられていたらしく、きっと悪戯されたんだろう程度に考えてそのまま連れ帰りベッドに寝かせたと言う。
そして翌朝、丹さんから堺さんの携帯電話に問題の写真と動画がいきなり送られて来た…ということだった。

「…何か謎が深まったような」

「記憶がぶっ飛ぶほど飲むなってあれ程言ったのにわかんねぇんだな、お前は」

「う…本当にスイマセン…今回は俺が全面的に悪いッスよね」

「今回も、だ」

「う、ウス」

ベッドに正座したまま上目で堺さんを見上げると、はぁーっと深い溜め息を吐いた堺さんが呆れた表情で呟いた。

「石神ん家行くの、当面禁止」

「さ、堺さん…?」

ふいっと目を逸らしたその表情からは呆れや怒りの中に少しだけ照れが垣間見えた気がして。
更に追い討ちをかけるように耳の先っちょがほんのりと赤いのが何だか嬉しくて。

「お前さ、俺がお坊さんとか神様に見えんのか?」

「え…?」

「俺もお前と一緒でごく一般的な普通の男だっつーことだよ、嫉妬しちゃ悪ぃか!」

「え!いや、スゲー嬉しいッス!」

「…ふん」

先程のレアな照れ堺さんの面影は一瞬で消え去り今はすっかりいつもの渋い顔をした堺さんに戻ってしまった。
…ほんのちょっとだけ可愛いと感じてしまった事は堺さんには内緒。
そして俺はニヤニヤとだらしなく緩む頬をそのままに、いつの間にか腕を組んで思考を巡らせ始めた堺さんの背中にぎゅうっとしがみつく。
かっこよくて稀に可愛い、その全部が大好きだという気持ちを両手いっぱい込めて。



end.



10000打御礼短文、サクセラ+SMプレイ編でしたー!
SMプレイ…ちゃんとなってるか不安だけど^^;

真相が明かされないまま話終わっちゃったけど、真実はガミキヨ編にて!←

アンケートでコメントを下さった方のリクエストにも沿えたかな…?いかがでしょうか^^

ってか、堺さんってチンコとか普通に言っちゃう人かなぁw

2011.07.20

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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