02

更衣室に戻ると直ぐにザキさんの姿を見つけた。
ザキさんは何故か未だ海パンのままでジャージの上着だけを羽織った恰好をしてベンチに腰掛けていた。
その様子は端から見てもいつもと違いぼんやりとしていて、時折頭を抱えては大きな溜め息を吐いていた。

(やっぱり思った通り体調が悪いんだ…きっと体がだるくて着替えもままならないんだな)

ぎゅっと罪悪感が胸をしめつける。
年齢の割りに体調管理には厳しいザキさんは無意識に無茶をしてしまう俺に良く言っていたんだ、風邪かもって思ったときは汗を洗い流した後直ぐに体を温めてさっさと寝ちまえ、馬鹿なお前でもそんくらいは覚えていられるだろって。

(よし、ザキさんに教わった通り俺に出来ることを精一杯しよう!)

そう改めて決心をして俺はザキさんの元へと駆け寄った。

「ザキさん!そんな恰好していると余計に悪くなるッスよ!早くシャワー浴びて着替えないと!」

「…は?ってか、椿!?」

「俺が手伝うッスから!えと、着替えとタオルを持って…あ、肩に掴まって下さい」

「え、いきなりお前何?どうした?」

「また顔赤くなってる…あーもう、ちょっと掴まってて下さいね!シャワー室まで運ぶッスから」

「はー!?!?意味わかんね!ちょっ、離せって!」

嫌がっては暴れるザキさんを無理矢理お姫様だっこをしてシャワー室へと運び、わーわー喚くザキさんを無視してジャージと海パンに手を伸ばした時、不意にザキさんが繰り出した鉄拳を鳩尾に受けた俺は無念にもその場に崩れ去った。



* * *



「――で、看病しようとした訳か?」

「う、うす」

シャワー室の狭い一室で正座した俺と腕を組んで呆れたように溜め息を吐くザキさんは向かい合っていた。
事の成り行きを辿々しくも一生懸命に説明をするとザキさんは「本当お前って馬鹿」と言って苦笑いを溢した。

「俺は風邪ひいて無いから、ひいてたらプールなんか入るもんか」

「う…じゃ、何で顔赤くなったり、変なこと言ったりしたんすか…?」

「それはっ…お前も赤くなってただろ!ガミさんに絡まれてた時!」

ザキさんはさっきより更に顔をしかめて視線を背けた。

「それは、緊張…っていうか恥ずかしかったからッス、素肌で触れるのに、な、何か変な感じがして」

おかしいことを言っているっていう自覚はあった。
ザキさんだって、自分の後輩がいきなり緊張だの恥ずかしいだの言ってきたらきっと変な奴だと思うよな。
でも俺だって原因とか理由なんかわからないしどうしてあの時あんなにも動悸が激しかったのかなんて、サッカーの時にしかまともに働いてくれない脳をフル回転させても答えは出なかったんだから。

小さく呟かれた俺の言葉をザキさんはどう解釈したのだろうかとチラリと顔を盗み見るとザキさんは悔しそうに顔を歪めた後いきなり俺を抱き寄せた。

「ざ、ざきさっ!?」

「じゃあ今は?」

「え?」

「今はどうなんだよ、互いに半裸で抱き合って」

どうって…そんなの、やっぱり俺はおかしいんだろうか。

世良さんに抱きつかれた時は変な感じがした。
ガミさんにからかわれた時は本能的に心臓が高鳴った。
じゃあ、ザキさんに抱き締められている今は?
生肌が触れ合っているからドキドキするのか?
違う、それだけじゃなくて…

「…わ、わかんないッス、ドキドキするけど、世良さんとかガミさんとは違うような、」

「俺も」

「え…?」

「お前と同じこと感じてんだよ、まぁお前と違って理由はちゃんとあるけどな」

「理由…?」

「それくらい自分で考えろ馬鹿」

ザキさんは俺の肩に顎を乗せて「そんなんじゃいつまで経っても能無し猟犬だぞ」と言って笑った。
ザキさんの表情は生憎見えなかったけれど声は晴れやかな気がしたからとりあえずは気持ち悪がられなかったと一安心。

(そういえばガミさんが、ザキさんはナイーブだから感じ取ってやらないとって言ってたな…)

ふと思い出したガミさんの言葉。
それは今正にこの状況を言っているのだろうか。
ザキさんの両腕は俺の背中にしっかりと回っていて、でも俺の腕は咄嗟の出来事だったからだらりと下げたまま。

(こういう場合、俺もちゃんと抱き締めた方が良いってことなのかな?)

そう判断して。
緊張しつつも腕をザキさんの背中に恐る恐る伸ばしてみると。

「…椿のくせに」

と小さな言葉と共に、ぎゅっと更に距離が縮まったから、俺はばれないように小さく微笑んだ。



end.



5000打御礼短文!
ザキバキときメモルートでした^^
かっこつけきれないザキさんと、空回りする男前バッキーを目指しましたw
この二人はほとんど書かないであろうCPなんで結構苦労しました…が!
出来上がってみると、あ、結構行けんじゃね?みたいなw
っていうかガミさんとバッキーの噛み合わない会話を書くのが一番楽しかったw
きっとお互い気付いてなくて椿が出て行った後くらいに堀田さんがやんわりつっこめばいい^^

そしてバッキーには無限の可能性を感じるよね(^p^)<右側としての

改めまして!
5000hitありがとうございます^^
これからもどうぞSBlinerを宜しくお願いしますm(_ _)m

2011.06.12

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