01

「…い、嫌ッス」

火照り始めた体を落ち着かせようとぎゅうっと目を瞑って漸く絞り出した言葉。
それを聞いたガミさんは少し間を置いた後フッと口元を緩めると、「嘘は駄目だよな?」と言って俺の耳朶へ舌を這わせた。

「ほ、本当ッス、俺はっ」

「なぁ赤崎、椿調子悪ぃみたいだから休ませるなー、俺がプールに落っことしたからかもしれないし」

「えっ?」

「…確実にガミさんのせいでしょ」

「えー大丈夫かよ椿ー」

俺の抗議の言葉に被さるようにガミさんの口から発せられた台詞はまるで俺の意思は関係無いと言わんばかりのもので、世良さんやザキさんが心配そうに声をかけるなか俺はポカンと呆気にとられるしか無かった。
そしてガミさんに促されるままプールから上がると逃げることも出来ずに手をひかれ出口へと向かう。
何がなんだか理解できず頭上に疑問符を沢山浮かべてガミさんを見上げるけれど、当の本人は緩く口角を上げるだけで何も言おうとしない。
ガミさんが何も言わないのならばと、俺達の後ろをのんびりと着いて歩く丹さんと堀田さんを見るけれど、やっぱり二人共同じく微笑むだけで口を開くことは無かった。



* * *



そして、俺は今何故か宿泊先のホテルのガミさんと堀田さんの部屋のベッドに座らされている。
どんな風に着替えてここまで来たのかなんて覚えていられない程、あっと言う間に部屋に連れて来られベッドの上へと追いやられた。

(…嫌な予感しかしないのは何でだろ)

今の状況は正に蛇に睨まれた蛙そのものだ。
3匹の蛇であるベテラン組に囲まれた蛙の俺は、ベッドヘッドに背中を預けただビクビクしながら膝を抱えて縮こまるしか無い。
そして何のきっかけも無しに不意ににっこりと微笑んだガミさんが「椿、さっきの続きしようか?」と言い手を伸ばしてきた瞬間、俺の中での予感は確信と驚愕に似た絶望へと変わり、嫌なのに、逃げたいのに、でもガミさんによって発火させられた快楽の火種は燻ったまま残っていて、結局俺は抵抗らしい抵抗をすることもなくその大きな掌を享受するのだった。





「あう、あ、嫌ッス、もうっ」

「はいはい嫌じゃないだろー、椿は嘘つきだなぁ」

「うっ、ふ、や、うあ」

ごりゅごりゅっと前立腺を僅かに掠めながら遠慮無しに狭い俺の奥を突くガミさん。
その焦らすような腰使いと若干の言葉責めにまんまと流されそうになっている俺の脳は、より強い快感を求め意思とは反する方向へと口を動かそうとするけれど。

「う、あの、も、もっとあの」

「もっと、何?」

「うぅ…い、な、何でも無いッス」

ヘタレな俺は肝心な所で羞恥が勝ってしまい、先程から何度も口を開いてはその先がどうしても言えなくて噤んでいた。
一度口に出してしまえばきっとより強い快楽に心も体も流されきって余計な考えなんか吹っ飛んでしまうんだろうけれど、相手が10歳も年上の先輩だからかどうしても緊張のせいで理性が働いてしまうのだ。
…身体を繋げて喘いでいる時点でそこには理性など無いに等しいのに。

「うーん、じゃあ助っ人でも呼んでみようか?堀田くーん」

「…へ?が、ガミさんっ」

「なんすか?」

「椿気持ちよくさせんの手伝ってよ」

「あ、や、堀田さん…?」

ガミさんに呼ばれた堀田さんは腰掛けていた近くのソファーから立ち上がると、中途半端な熱に侵され情けない表情をしているだろう俺の顔を覗き込んでフッと微笑んだ。

「ガミさんは相変わらず悪趣味だな、椿が可哀想」

「えー?おねだりさせたいだけだって」

椿さっきから恥ずかしがっちゃって駄目なんだよ、だから恥ずかしさもぶっ飛ぶくらい気持ちよくさせてやろうと思って。
いつもと変わらない飄々とした口調でそう言ったガミさんは繋がったまま俺を抱き上げると体を反転させてベッドに寝そべった堀田さんの上に下ろす。
そして堀田さんに促されるまま恐る恐るジャージの短パンをずらしてみると、既に完全に勃ち上がり透明な汁を溢す淫茎が姿を現した。

「おー、準備万端だなー」

「こんな椿を前にして勃たない方が変ッスよ」

(た、たぶん、っていうか、かなりでかい気がする…)

ガミさんと堀田さんが呑気に会話をする中、俺は目の前の堀田さんの淫茎から目を離せずにいた。
それは好奇からなのかこれから襲ってくるであろう快感への恐怖からなのかは曖昧なところだけど、ふと俺の視線に気付いた堀田さんが俺の耳に息を吹き掛けるように「何も考えらんないくらい良くしてやるから」と甘く囁いたから、俺は必死に首を横に何度も振った。

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