036.逢引は2畳間で/ガミキヨ

※ガミさんが変態につきご注意





――カタカタカタッ

「うーん…ネット久々過ぎてわかんねーなぁ」

「さっきから何検索してるんスか?」

「お、やっと発見…これだよ」

――カチッ

「どこスか?…え、甲府??あー!これヴァンガード甲府のッスか!」

「世良声デカイよ…そう、甲府のホームグラウンドとクラブハウス、中どうなってんのか知りたくってさ」

あーなるほど、だからネットカフェなんスか!
そう言って世良は持っていた少年漫画を、既に読破して山のように積んでおいた一番上に置いて画面を覗き込む。

「ハマさん関係ッスか?」

「まぁ…次当たるの大分後だし、昨日ハマと久々に喋ったらさ、何か気になってきて」

「ガミさんパソコン持ってるんじゃないスか?借りれば良かったのに」

それが出来たら金出してわざわざネットカフェになんか来ねぇよ。
と言いたいところをなんとか堪え、「まぁたまにはいいだろ?」とうやむやに誤魔化した。
世良は不思議そうに首を傾げたものの一拍間をおいて「俺は漫画読めて楽しいからいいッスけど」と言ってまた新しい単行本を開いた。

確かに世良の言う通り、ガミさんちのノートパソコンを借りれば済むことなんだけれど。

(あの人、ハマの話になるとすぐ不機嫌になるからな…)

ハマがチームを離脱してからというもののガミさんの中でのハマは単なる恋敵になってしまったようで、「俺結構嫉妬深いよ?清川が石浜の話ばっかすると妬いちゃうなー」とまるで気持ちが籠っていない棒読みで呟くもんだから、その日から俺はなるべくガミさんの逆鱗に触れないように“親友”の話は避けていた。

(ハマは親友であって好敵手なだけで、ガミさんが疑うようなことは全然無いのに…信用されてないみたいでむしろこっちが腹立つ…)

まぁ俺が気を付ければ平穏なんだし、余計なことを言って甲府で頑張るハマに迷惑かけんのも、あぁ見えて結構繊細なガミさんを不安にさせんのも、あと面倒くさくなるのも全部嫌だったから。

(って開き直ってるけど、気を付けんのって結構しんどいんだよな…はぁ…本当つくづく自分の性格を呪う)

胸の内で宛の無い溜め息を一つ吐いて俺はパソコンの電源を落とした。

「世良、俺もう用事すんだけど、まだいる?」

「まじスか!?あー…もう5分だけ待ってて貰っていいスか?これ、後1巻で終わるんで!」

「わかった、んじゃ俺はゲームでもしてようかなー」

「あ、じゃあとりあえずこれ置いてくるッス」

世良は最後の1巻だけを残して漫画のタワーを両手に部屋を出た。
よろよろしてたけど大丈夫かな…と、歩いて行った先を少し眺めた後、座椅子を倒して横になる。
ふと携帯が気になってポケットから取り出してみると、気付かぬ内に着信があったようで。

「わ、ガミさんから3回も電話入ってたんだ…やべ、気付かなかった」

「えー今気づいたの?ひっどいなぁ、清川は」

「…え」

「おー!この部屋凄いなお座敷じゃん、いいねぇ」

「え!?ガミさんっ!?」

部屋の扉を開けて笑顔を浮かべるのは紛れもなくガミさんで、今日俺がネットカフェにいることなんて一言も言った覚えがないのに何故この人は今俺の目の前にいるんだろう。
驚愕で固まっている俺に気付いたガミさんは「お邪魔しまーす」と暢気な声を上げて、俺の視線なんか無視してずかずかと狭い2畳の密室に入ってきた。

(え?ガミさん?なんでいんの?世良は?え?どっから聞き付けてきたんだよ!?)

ガミさんは「男二人だとちょっと狭いね」とか「ゲームも映画も出来んのか、ネットカフェすげーな」とか言っていつの間にかすっかり寛いじゃってるし。
がっしり体型のガミさんと二人並んで座ると肩が丁度触れてしまう狭さに、行き場の無い焦りなんかも生まれてきて、内心で冷や汗が垂れてくる。
ここで何をしていたのかなんてガミさんに勘付かれたらそれこそ地獄、入口側に陣取ったガミさんから逃げるなんて到底無理だ。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、ガミさんは俺がオフにわざわざここに来た理由は聞かず、その変わりに意味不明なことをいきなり口にした。

「ここ、壁薄い?」

「まぁ、間仕切り程度ッスよね」

「隣はいる?」

「今は空いてるみたいッスけど…何でそんなこと、」

聞くんスか?と続く筈だった俺の台詞は、ガミさんが俺の唇ごと食べてしまった。
何の前触れも無く唇を塞がれ放心する俺を尻目に、すかさず舌を捩じ込んで俺の口内を蹂躙するガミさん。
ツンと固くした舌先が俺の舌を擽る様に撫でて、そして歯列やら歯茎やらを丹念に舐め回して。
やっと満足したのか解放された時にはもう俺の息は絶え絶えで、気持ち良さに僅かに染まった目をキッと鋭くすることしか出来なかった。

(Aへ続く)



end.



まさかの2部構成…すいません無駄に長いですm(_ _)m
次はただのエチです。
苦手な方、18歳未満の方は見ないでね(^ω^)


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