021.no cry,no more./ザキセラ

※サクセラ前提のザキセラ、及び堺の嫁ちょこっと登場



「世良さん、いい加減どいてくんない?ここ俺の部屋」

「…やだ」

はぁっとわざと大袈裟に大きな溜め息を吐いて世良さんを見る。
世良さんは相変わらず拗ねたように唇を尖らせたまま俺のソファを陣取って携帯ゲームを弄ってるけれど、俄に俺の言動が気になるのかちらちらと様子を伺っている。
こういう風になった世良はさんは正直言うと面倒くさい。
でもきっと放置したら向こうから何か言ってくる筈、寂しがり屋の世良さんはいつもそうなんだよなと頭の中で一連の予想できる世良さんの行動パターンを描きながら、俺は何食わぬ顔で「あっそ」と一言呟いてリビングを出た。
そして暫くすると。

「あかさきぃー」

「なんスか」

「怒んなよー…」

ほらやっぱり。
世良さんは寝室のベッドに寝そべって雑誌を読んでいた俺の元へとぼとぼやってきては頬を膨らませた。

「赤崎が構ってくんないから、PSPの赤崎に構って貰ってたんだよ」

「ウィイレっすか」

「そ、お前鹿島相手にハットトリックしちゃってさー俺押し退けて」

ゲームの中の赤崎はかっこいいの何のって。
でも試合に勝ったのは嬉しいけど、やっぱゲームでも点が入んないと嫌なもんなんだな。
世良さんはぶすくれた顔でそうぽつりと呟いた後、すぐにいつもの溌剌した笑顔を浮かべて俺が横たわったままのベッドへと上がってくる。

「何スか、世良さんはソファでしょ」

「良いだろー別に」

「ゲームの中のかっこいい赤崎と遊べば?」

「何だよやきもち焼くなよー」

っつーか、いい加減に構え!
と言って仰向けになった俺の上に世良さんは跨がって悪戯っぽい笑みを浮かべた。

(…さっさと素直にそう言えば良いのに)

そう頭の中で溜め息を吐く。

堺さんと秘密の関係を築いている世良さんは、たまにこうして俺のところに気まぐれに遊びに来ては訳もなく構えと言う。
理由なんて、単純な世良さんのことだから堺さん関係の事だろうとおおよそは想像が付くけれど、その度に甘えられる俺の身も少しは案じてくれないものかと思う。
堺さんを一途に愛する世良さんのことが好きな俺の気持ちをほんの少しでいいから汲み取って欲しい。
まぁそんな気の利いたことを世良さんに求めてもしょうがない事は重々に理解しているんだけれど。

「どんな風に構って欲しいか具体的に言って」

「意地悪め!」

「何とでも言えって、…まぁ甘勃起させながらゲームしようなんて言われても笑っちゃうッスけど」

「…ばか崎」

そうして毎回、何だかんだで最終的に必ずベッドインする俺達はきっと互いに何かを間違えているんだろうけれど今更この変な関係を打開できる筈も無く、ただ俺は目の前に差し出された世良さんの体を力一杯抱きしめることで己を満たしていた。



* * *



(もう6時か…ちょっとやり過ぎたかもな)

うっすらと瞼を開けてサイドテーブルに置いた腕時計を確認する。
昼間から始まって互いに3度も射精したんだ、そりゃこんな時間になってもおかしくないよな。
折角のオフの日に半日をベッドで過ごすなんて勿体無いと思うが、隣で未だ安らかな寝息をたてている世良さんの寝顔を見るとこんな休みも悪くないと思えるから不思議だ。

(単なる欲求不満…それとも嫁に対するジェラシーなのか?)

喘ぎながら上の空で呟いていた世良さんの言葉、堺さんの嫁さんが今週から堺さん家に泊まりに来てるって話。
何も気にしない素振りで話していたけれど世良さんの表情は快楽に染まりきれずに切なさを帯びていて、だから俺は気付かれないように必死に世良さんを絶頂へと何度も追い込んだ。
何も考えなければ良い。
堺さんのことも嫁さんのことも全部全部。
全てを忘れて、そして世良さんを抱く俺だけに夢中になればいい、そう思いながら行為に及んだ俺を世良さんはどう思うだろうか。

ふと何気なく静かに眠る世良さんを見ると、目尻から小さな雫が一つ溢れるのが見えてハッと息を飲んだ。

(…俺は絶対に泣かせないのに)

その熱い雫を指先で拭う。
この涙もろとも世良さんの全部を俺が堺さんから奪ってやりたい。
切なさも寂しさも、一つも感じないくらいに愛せるのに。

(それでも世良さんは、きっと堺さんを選ぶんだろうな)

だから俺はこれからもずっとこの矛盾した曖昧な関係のまま、世良さんが溢す涙を拭うんだろう。



end



健気一途なザッキー(^p^)ジュルリ
ザキ→サクセラ好きすぎて生きるのが辛い…!←


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