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しくじった。
ぼんやりと視界に入った白い天井を見てからため息をつく。頭、両腕、腹部、右の太もも、両足首…数え切れないな。全治何ヶ月だ?…まぁ、多分完治する前に任務は入るだろうけど。イノセンスは回収できたし、それをちゃんとファインダーに持たせた所までは覚えている。だからお咎め無しのはず。コムイさんも分かってくれるだろう。頼むから誰も私を怒らないでくれ。死ななかったから許してほしい。
多分しばらくはこの病院から動けないだろう。本部からも離れた任務地で助かった。ゴーレムも怪我の範囲までは伝えることは難しいはず。誰にも気づかれず私はここで治癒を受けるとしよう。
ガミガミと怒られるのは嫌いだ。

怒られるのは、大嫌い。

「目が覚めてんなら身動きぐらいしろ」

予想外の出来事が起きた。これも不運が続く原因なのか。

「化け物みたいに見てんじゃねぇ」
「えっ…何してるの、こんなとこで」
「……別に」

フイ。と窓の外へと顔を逸らした。
何その態度。親に怒られてる子供みたいなその態度。挙句の果てには舌打ちまでしてるし。てかなんで私舌打ちされなきゃいけないの?一応頑張って生き延びたんだけど。

「褒めるわけないだろ」
「…」
「ふざけんのも大概にしろ。死ぬくらいならエクソシストなんか辞めておけ」
「…死んでないけど」
「死にかけてんだろ、口答えすんな」
「…」
「次、はねぇ。わかったか」
「…」

むかつく。なんでいつも神田に怒られなきゃいけないの。私は自分の力が憎かった。だけど人の役にたてるって知ってこの仕事が辛いとは思わなかった。それよりも辛いことを沢山知っていたから。だから、怪我だって仕事につきものだ。そう思ってた。なのに、いつも、いつも。どうして、神田は怪我する度に私の前に現れて私の心を傷つけるの。

「…嫌い」
「あ?」
「神田なんて、大嫌い」
「そうかよ。別にそれでも構わねぇ」
「自分だって、いつも死にかけてるじゃん!なんでいつも私ばっか怒られなきゃいけないの!」
「俺とお前じゃ違うんだよ」
「何が違うの」
「俺の傷は少ししたらすぐに治る。だが、……そうじゃねぇだろ。生身の人間だ。一度傷を終えばずっと身体に残る」
「…何それ。神田が生身の人間じゃないみたいな言い方しないでよ」
「…」
「私だって…私だって、心配するよ。神田の身体が傷の治りが早いのも知ってる。だからいつも無茶してるのも知ってる。けど、いくら傷の治りが早いからって言っても、身体の傷は同じくらい痛いよ。どうして神田だけ特別だって言えるの?特別なんかじゃない。神田も私と同じ人間なんだから、」

息が詰まる。
なんで私こんなにも必死に叫んでるんだろ。身体中痛いのに大声なんか出して。馬鹿みたい。神田相手にこんなに必死になってさ。なんで視界が揺らぐのか。もう身体も心もぐちゃぐちゃだ。

「…チッ。なんで泣いてんだよ」
「泣いて無いよ馬鹿!」
「………めんどくせぇ」

舌打ち混じりに聞こえた声。
どうせ私はめんどくさい女ですよ、悪かったね。零れ落ちる涙を拭こうと手を伸ばすが届かない。両腕包帯グルグルなのを忘れていた。

頭上から降ってきたため息と共に影が落ちる。
ふと顔を上げると近くに神田が居て、細長い神田の指が私の頬に優しく触れた。指先が乾燥してカサついてる。控えがちに私の涙を指で拭う。

少しクリアになった視界には、いつもより優しい表情をした神田がいた。

なんでいつも私が怪我したら怒るの。
なんでいつも私が怪我した時側にいるの。
私が目覚めるまで何してるの。忙しいはずじゃない。滅多に本部にもいないのに。

私の問いは声にならなかった。
そんな顔されたら、何も言えないよ馬鹿。

いつも君だけを見ているから