×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -





久しぶりの休日だった。
午前中に街で思いっきり買い物を楽しんで、大好きなお店のランチを食べて、午後はテラス席のあるカフェでゆっくりまったり過ごす予定だった。
血みどろな任務とは違ってキラキラと輝く休日を指折り数えて過ごした。いい歳をした大人が馬鹿みてぇと誰かさんの声が聞こえてきそうだが気にしない。たまには息抜きもしないと女はやってられないんだから小言は止してよね。蕎麦と鍛錬しか脳にない筋肉バカとは私は全然違うんだから。

私の大切な大切な休日。
誰にも邪魔されないで過ごす予定だった。




予定は未定だ。





水の音がする。
沢山の水が空から地面へと叩きつけるような音が。ガタガタと揺れる窓をいい加減修理したらいいのに。コムイに何度も言ってるのに一向に直す気配はない。ゴロゴロと地を這う音は苦手だ。今日は一日中鳴っている気がする。あぁ、なんだか頭も痛いや。

意識が少しずつ浮上する。
けど瞼はまだ重い。嫌な現実から目を背けたくて必死に抵抗を重ねる子供みたいだ。

「すごい雨さぁ」
「僕も久々の休日でしたが、残念です」
「コムイが気を利かせて、たまには若いもんで楽しめって言ってたのに全部おじゃんさ」
「リナリーは調理場でジェリーと楽しんでましたよ」
「いいなぁ。俺も混ぜてもらおうかなぁ」
「ラビ料理できるんですか?」
「全然駄目さー」

気の抜けた声。せっかくの休日が駄目になったのは私だけじゃなかったみたい。リナリーはいいなぁ。料理もできるし、趣味も沢山あるし、それに比べて私は…。まぁ、いいや。今日はもう少しここで過ごそう。さっきから嫌なことばかりだけど、ここはとても居心地が良い。お日様なんか出ていないのに陽だまりのような温かさを感じる。
鼻を掠める香りも私の好きなせっけんの香りだ。お風呂入ったっけ?まだ昼間だから入ってなかったような…。まぁ、どっちでもいいや。ごちゃごちゃ考えるのはやめて、もう一度眠りにつこう。

ぽかぽか、ぽかぽか。
今とても温かいんだ。

「いつまで狸寝入りしてんだ」

あれ、おかしいな。
変な声がする。

「まぁ、それでお前の気が晴れるんなら別にかまわねぇけど」

なんでここにいるの。

「…神田」
「ん」
「何してるの」
「別に」
「ここ談話室だよ。神田の部屋じゃないよ」
「…からかってんのか」
「いったっ!!デコピン反則」
「寝てろ」
「今起こされた」
「…そうか」

まだ不安定な視界の中、立ち上がろうとする神田のズボンを辛うじて掴んだ。言いたいことは沢山あるのに問いかけようにも上手く舌が回らない。いつも談話室なんて近寄らないくせに。あそこにアレンとラビもいるのに。絶対来ないはずなのに。なんでいるのよ。
まだボヤケた視界の先にいる神田の顔はあまり良く見えない。多分不機嫌な顔をしているのは間違いないだろう。だけど、

「もう少し、」

どうしたかったのか。自分でもよくわからない。再び感じた体温に安心した私はそのまま眠りについた。多分とても疲れていたんだろう。とてもとても眠いんだ。そう、ただそれだけだから。

「晴れたさぁ」
「そうですね。外はまだ土砂降りですが」
「素直じゃないさ」
「全くですね」

雨、ときどき晴れ