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たまたまつけたテレビで見た。今日は深夜に流星群が見れる日らしい。運良く休暇が重なった私は直ぐ様隣の部屋へと駆け込んだ。寝起きで機嫌の悪い人物を叩き起こせば、いつも以上に怒鳴られてしまう。だけど、流星群が見たいんだ。我が儘を告げて駄々をこねれば、珍しく彼が身体をベッドから起こした。




「…流星群っつーのは、この丘から見えんのか?」
「そう、この丘が一番よく見えるらしいよ。テレビで言ってた」
「オメーも相変わらず庶民共と同じだなァ。その能天気な脳ミソ、どうにかなんねェのか」
「多分ならない。それより、ギアッチョも今日休みだったんだね。本当に良かったよ」
「休みだからよォ〜〜!俺だってゆっくりしててーわクソが!叩き起こしたのはどこのどいつだァ!?ぁあ!?」
「ちょ、怒らないでよ。ギアッチョがいてくれたからここまでこれたんだよ?感謝してるから」
「ぁあ!?メローネに頼めばいいじゃねぇか!メローネによォ!」
「メローネは嫌だよ。身体すぐ触ってくるし」
「…それは駄目だな。あいつに近寄るんじゃあねーぞ」
「分かってるよ。だから頼んだの」
「…チッ」



一呼吸置いて、再び空を見上げたら、キラキラと輝く星々が一気に加速し流れ落ちた。歓喜の声をあげる私の隣では、眼鏡越しに空を見上げる彼がいた。星空を見に来たはずなのに、ついつい瞳に映してしまうのは彼の姿ばかりである。そんな私に気がついたギアッチョが、不服そうな表情で私に文句を垂れてきた。



「オメー…流星群見に来たんじゃねーのかよ。どこ見てんだ、上見ろや」
「何故かギアッチョから目が離せなくて」
「…はぁ?」
「綺麗だなって」
「……おい、大丈夫か?」



綺麗、そう思ったことは事実だった。薄汚れた私達も、こんな広大な夜空の下では、少しでも綺麗に見えたんだ。光り輝く星のように、少しでも、輝いていた光りに見えた。星空が私達を見下ろして優しく微笑んでいるような、そんな感覚に陥ってしまう。

今だけは、全てのことを忘れよう。

もう一度彼を瞳へ映してから、星々が流れる星空を見上げ、目映い光りに目を細めた。

あぁ、いつか。このように輝ける日がくるんだろうか。

そんな希望を抱いてみては、直ぐ様胸の奥底へと消し去った。明日からはまたいつも通りの日常だ。リゾットに命令されたターゲットを暗殺し、アジトまでの帰路を歩む。面白いことなんて何一つない。人の命を奪うのだ、それなりの代償は心が受けていた。私はこの世界に生きる人間としては、少しばかり心が優しすぎるのかもしれない。



「…今日は少し冷えるね」
「相変わらず寒がりだな、オメーはよォ…」
「ギアッチョが超人なだけだって」
「…チッ。今日だけ特別だからな。勘違いしてんじゃあねーぞ」
「……ありがとう」



肩を抱いてくれた優しさに目元がグッと熱くなる。夜に怯える私の心を温もりと光りが、優しく包み込んでいく。微かな希望を脳裏に浮かべては、静かに瞼を下ろして願う。

光り輝く星々よ。どうか今だけは、私達の姿を綺麗に映して。汚れを光りで隠すように、せめて今だけは。輝くことを望ませて。



星空が君を見下ろす夜



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