25.エピローグ
「ナツ、どこ行くんだよ」
「ファーストネームさんのお墓参りに行ってきます!」
「気をつけて行ってこいよ」
ファーストネームさんと僕さんが居なくなって半月が過ぎた。ファーストネームさんが居なくなった時は、また彼女を失ってしまったと何度も何度も嘆いていたけど、それも今では淡い思い出として心の中に終っている。
僕も少しずつ成長して、ファーストネームさんとちゃんと向き合って、これからのことを考えるようになった。以前の僕からは想像つかない程に、僕はちゃんと男らしい男になったと思う。
多分ファーストネームさんが今の僕を知れば、らしくないと鼻で笑うだろう。だけどそれくらいが丁度いい。彼女を笑わせてあげれるくらいが、僕にとっては丁度いいんだ。
「ファーストネームさん。今日もファーストネームさんの大好きなお花を買ってきましたよ」
彼女の名前が刻まれた墓石の前に、彼女が大好きだった花を添えて、軽く両手を合わせた。
昔話をするように、沢山の出来事を彼女に話して、自分の思いを沢山告げた。
もう僕はくよくよしない。ファーストネームさんの分まで沢山生きて、ファーストネームの分まで笑顔でいる。
そんな風に思えたのも、アースランドのファーストネームさんに出会ってからだ。彼女のお陰で僕は前を向き強くなれた。異なる世界が教えてくれた、愛の形とその全て。
その全てに僕は感謝して、前を向く、そう決めた。
「ファーストネームさん。今日も空が蒼く澄んで綺麗ですよ」
見上げた大空を見つめれば、彼女の笑った優しい声が聞こえたような、そんな気がした。