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言葉なき真実

放課後。いつものように名前が来るのを待っていた時だ。普段なら直ぐ様帰るはずの爆豪が、まだ教室に残っていた。珍しいと思いながらも、何かあったのかと話しかければ、話があると言われ教室の外へと呼び出された。

上鳴に告白か!?と茶化されたが、そんなあいつのノリに答えてやれるほど、今の俺には余裕がなかった。
何故なら分かっていたからだ。爆豪が今から俺に、話そうとしている内容がなんとなく分かっていた。

口内の唾液を飲み込んで、バクバクとうるさい心音を落ち着かせようと深呼吸をする。

「…こんなとこで、なんの話だよ」

人通りの少ない渡り廊下へとたどり着けば、平然を装いながら爆豪に話しかけた。前を歩いていた爆豪がこちらを振り返り、ルビーが真っ直ぐ俺だけをとらえていた。

「…切島、アイツの事好きなのか」

もう一度口内の唾液を飲み込んだ。先程から飲み込むばかりで、口内はすっかりからからだ。
爆豪が言うアイツとは、多分名前の事だろう。爆豪の一言にたじろう俺は、なんて男らしくねぇんだろう。初めから分かっていた事なのに、いざその事に触れられてしまうと、身体が思うように動かなくなっていた。

「…爆豪は、どうなんだ」

おかしい。こんな事を聞きたい訳じゃないのに。口が勝手に先走って言葉を発していた。望んでもいねえ質問を、聞きたくねぇ回答を、どうして俺は望んでしまっているんだ。

加速する心音を居心地悪く感じながらも、爆豪の口元をただただ見つめていた。どうか、どうか。俺の想像している言葉と、別の言葉を言ってくれ。そんな思いを胸に唇を噛み締めた。

「…」

「…」

言葉はなかった。爆豪は俺の質問に何も回答しなかった。無言がこれほどまでにも、真実を更に確信に近づけるものだとは知らなかった。否定しない答え程、残酷なものはない。
口にする言葉が思いつかないままでいたら、爆豪は俺に背を向け立ち去って行った。

爆豪も、俺も、さっきの会話で全ての事が分かってしまった。互いの思いに、互いの気持ちに。気づいてしまったからには、もう後戻りはできなくなっていた。考えたくもない、最悪な真実が更に俺を追い詰めていく。俺はただ、名前の隣で笑っていたいだけなんだ。なのに何故、運命は俺を名前の元から引き離そうとするんだよ。
こんなにも、俺は、名前の事が大好きなのに。


その日の帰りは、名前の顔を直視出来ずにいた。話した会話もほとんど覚えていない。名前の無邪気な表情が、更に俺を苦しめた。幼なじみの両思いを素直に喜んでやれない俺は、全然男らしくねぇと思う。叶うはずのねぇこの思いに、いつまで俺は、振り回されているんだろうか。

茜さす夕日が、少し猫背になった俺の背中を優しく照らしてくれていた。