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少女のオリジン




「失礼します…」
「待ってたよ、名字少女っ!」
「…ぇええ、誰ですか、貴方。オールマイトに声がそっくりですね」
「そいつはオールマイトだ」
「んがっ!?」
「女の子だというのに中々の顔芸の持ち主だね、君は」


相澤先生の言葉を聞いて、思わず顔が変に硬直してしまった。目の前にいる人物は声はそっくりだが、いつもテレビで見ていたオールマイトとは桁外れに別人であった。


「普段この姿は世間の皆には秘密にしているから、君が驚くのも無理はない」
「ええ!?じゃあ、本当に貴方が…」
「…あぁ。私の本来の姿はこれだよ、名字少女」
「…や、やつれてますね…ご飯食べてますか?死にますよ」
「ど、毒舌少女かい!?君はっ!!」
「応接間、今空いてるんで、そこ使ってください」


相澤先生に一言かけられて、そのままオールマイトと共に別室へと移動した。

用意されていたソファへ腰をかければ、少し濁した表情をしていたオールマイトが、重たい口を開いた。

「君を今日ここに呼んだのは他でもない。君の個性についてだ」
「…」
「…何故それを?って顔をしているね。話せば長くなるのだが、僕は君に自信を持ってほしいんだ」
「自信、ですか…」
「昨日の話、相澤君から聞いたよ。個性使ってなかったようだね。やはり、まだ自分の個性を使うことに抵抗があるかな?」
「…はい、」
「だが、君の個性に自信を持ってほしい。それは君の両親の願いでもあるんだ」
「え…」


オールマイトの話はとても信じがたい事ばかりだった。だけど知ることのできた真実を、自分の中で否定する事は一度もなかった。その答えが聞けただけで、自分の中の何かが「前を向け」と、そう呟いたのだ。


オールマイトは私の両親とは友人関係であり、私の両親を殺したヴィランを倒してくれたのも、オールマイトだった。
ヴィランに両親を殺される場面を、目の当たりにしてしまった私を救ってくれたのも彼だった。

私の両親は同じ個性の持ち主で、その遺伝子を受け継いだ私には、通常よりも爆発的な力が発揮されるようになっていた。そしてその力も私の身体が成長するにつれて莫大なものとなっていた。それを感じた私が、制御する事が怖くなり個性使用を今までずっと躊躇していた。勿論推薦入試の時は使用はしたものの、いつ暴走するのかわからないそれを扱うのをとても怖いと感じていたのだ。

ヒーローを目指しているにも関わらず、個性使用が怖いなどあってはならないものだった。そんな自分に対しても苛立ち、酷く悔やんでいた。だが、自分を憎む事以上に私はヒーローになりたかったのだ。ヴィランのいない世の中をつくるためにも、私はヒーローに…いや、ヒーローにならなければならないと思っていた。

そんな私の事情を知っていたオールマイトは、個性を自ら制御し使えるようにと、彼の計らいで雄英高校に入学できたようだ。個性以外の体術や技術は既に身につけていたため、それらを見込んだ中学の先生達の推薦だと思っていたがそうではなかった。


「…あれは君が五歳の時だったかな。あの時、君は僕に向かってなんて言ったと思う?」
「なんて言ったんですか?」
「『この世界からヴィランを消し去るような強くて優しいヒーローになる』幼い君はこう言ったんだ」
「…その思いは今もまだ心にあります!」
「だろうね。幼い君の決意に心打たれてしまった私は、君をヒーローにしてあげたいと、そう思ったんだ」
「…オールマイトにそこまでしてもらってるのに…私は、まだ…自分の個性を使う事が怖いです」
「無理もない。君の両親は二人共かなりのパワーの持ち主だったからな。まぁ私が何度もヒーローにならないかと誘ったんだが、首を縦にふることはなかったね…君がお腹にいたからさ…」
「…」
「おっと、お喋りが過ぎたようだ。君の両親のことはまた時間がある時にでもゆっくり話してあげよう。本題はここからだ。今日は午後からはヒーロー基礎学の授業があることは知ってるかい?」
「あ、はい!それはもちろん!個性を使うことは怖いですが、ヒーロー基礎学は凄く興味深いです!こんな気持ちではいけないと思うんですが、心なしか楽しみだと思ってます」
「そんなに言わず楽しみです!と胸をはらないか。君はまだ高校生なんだから」
「…だけど、ヒーローになるための授業なんで、真剣に受けないと駄目かと思いまして…」
「ま、まぁそれもそうだが…あ、そうそう。内容は授業の時に発表するけど、今回の授業で君の個性を使える範囲で使ってみるといい。不安なのもわかるが、いつまでも不安がっていては救える者も救えなくなるからな」
「はい…」
「大丈夫!自分を信じるんだ!その力は君の両親から受け継いだもの。君なら確実に使いこなすことはできるはずだ。急には無理だろうから、今日の授業で体験した経験を元に、これから少しずつ自分の個性と向き合っていくといい」
「…っ!はいっ!」

『自分の両親から受け継いだ個性』オールマイトのその言葉がとても胸に響いた。
そうだ、恐れる事は何もない。自分の両親から受け継いだ力。私が扱えなければ誰が扱えると言うんだ。私がしっかりしていないと、私が両親の分まで生きて、強くて優しいヒーローになってあげないと、死んだ両親もきっと悲しむだろうから。

「この学校には、リカバリーガールも教員としているからね。自分の力を恐れずに使ってみたまえ。まずは力を知る事が大切だ。それから少しずつ特訓を重ねて調節していくといい。今までとは違って、ここにはそれを可能にする授業も訓練場も沢山ある。これからだよ、君は。これからが君が最高のヒーローになるための第一歩を踏み出す時だ!」
「最高の…ヒーロー!」
「恐れることはない!少女!己を信じて突き進むがいい!さぁ、ご一緒にっ!せーの!」
「「プルスウルトラー!!!!」」


オールマイトと声を合わせてそう叫べば、自分の中から次々と自信が湧いてきた。そんな私の変化にいち早く気がついたオールマイトは、はにかむ笑顔で私を見つめてくれていた。

そうだ。怖がってても何も始まらない。自分から踏み出さなければ何も変わらない。私は前に進むんだ。最高のヒーローになるために。