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体育祭前日の夜(2/3)



「お、美味しすぎて言葉にならない…爆豪くん。良いお嫁さんになるよ」

「ぁあ?アホすぎて性別の区別さえもできなくなったか、世も末だな」

「褒めてるのに、貶されるッ!!」

何故だか分からないが、爆豪くんと共に和気あいあいと夕食を作っていた。怒鳴りつけられながらも彼のアシスタントをしていると、心なしか爆豪くんの機嫌が良くなったような気がした。正確に言えば気がしただけだった。

料理が出来上がり、机に並べれば、あまりの見映えのよさにスマホで写真を撮りまくった。
明日お茶子ちゃんに見せてあげようと張り切って撮っていたら、思いっきり後頭部を叩かれた。女子に対して容赦のない男である。

いざ料理を口にすると、あまりの美味しさに感極まって瞳を閉じた。言葉にならない美味しさに、幸せを感じてしまう。料理上手だと褒めてあげれば、恩を仇で返された。

「つかはよ食えや。こっちの料理が冷えんだろ」

「うん!全ていただくよ!お残しなんてしないから安心してね!」

「別に心配してねぇわ」

「爆豪くんも好きなだけ食べてくれていいからね。気兼ねなんてしなくていいからさ」

「誰が気兼ねなんかするかよ、モブごときに」

並べられた料理全てを口にするが、どの料理も美味しさが百点満点だ。器用なのか、それとも才能なのか、爆豪くんは口が悪い所を覗けば、全て満点の才能マンだ。

「今失礼な事考えてなかったかコラ」

「滅相もない!才能マンだと尊敬していたまでです」

「…」

「こんなにも美味しい精の出る料理をいただけて…もしかしたら明日の体育祭、私が優勝しちゃうかもしれない!」

「ハッ。生言ってんじゃねぇよ。テメェの目の前にいんのは誰だよ。ぁあ?」

「目の前?爆豪くんだけど…」

「下僕が主人に勝てる訳ねぇだろが」

「だけど、爆豪くん特製の精の出る料理を食べたから、爆豪くんにも勝てそうな気がする!」

「寝言は寝て死ね」

「本気だもん!絶対勝ーーつ!」

「ハッ。完膚なきまでに潰してやらぁ、覚えとけ」

「私も特訓の成果を見せてあげるぜ!相棒!」

「いつから俺はテメェの相棒になったんだよ」

「いや、さっきのクッキングタイムの時に相棒みたいだったじゃん?私達」

「アホか。あんな使えねぇ相棒いるかよ、必要ねぇわ」

「酷いッ!じゃがいもの皮剥いたのにッ!」

「じゃがいもの皮くれぇで威張んなクソが!」

「何言ってるの!たまねぎの皮も剥いたから!」

「しょうもねぇわ、ガキかテメェは」

二人で食べているにも関わらず、大勢で食べている時のような賑わいを見せていた。途切れる事のないテンポのよい会話は、料理を食べ終わるまで続いた。口の悪い彼だけど話がほどよく続く所を見れば、案外話し相手にはうってつけの相手なのかもしれない。

「ご馳走様でした!」

「…よく食うな、デブな訳だ」

「な!言い方!!本当に口が悪いんだからこの野郎!」

「対してテメェも変わんねぇだろが」

「そ、そんな事な…って、いいよ!食器は私が洗うから!」

「うるせぇ。流しまで運ぶだけだ。そこまでするかよ」

「あ、うん。ありがとう…」

流しに向かい、爆豪くんと共に運んだ食器達を丁寧に洗っていく。様子伺いに横目で爆豪くんを見れば、以前同様私のお気に入りソファでテレビを見ながら寛いでいた。
あのソファ気に入ってるのかな、そんな事を考えながら流しに溜まった食器を片付けていく。

こうしてみると、なんだか新婚さんのようでこっぱずかしい。だけど爆豪くんが旦那さんならば、こうやってご飯を作ってもらうのも悪くないかな。ご飯以外は私がカバーして、家事を分担するのも大切な事だから………

「って違うからァァァ!!!!」

ビュンッ。そんな効果音が聞こえてきた。
どうやら私は感情が高ぶると、無意識に個性を発動させてしまうらしい。
部屋の中を見渡せば、対して物は散らかってなかった。良かったと胸を撫で下ろせば、苛立ちのこもった荒い声が私の耳についた。
ギョッとして声のした方へと振り向けば、飲んでいたお茶がひっくり返り、服がびしょ濡れ状態の爆豪くんがいた。

「…オイコラクソブス…」

「全てカタカナの台詞怖いッッ!」

「窒息か丸焦げか瞬殺か選べやクソがァァァッッ!!」

「以前より選択項目が増えた!?てか、どっちにしろ殺されるううごめんなさいいッ!!!」

「死ね死ね死ねェェ!!!!」

「ぎゃーーーーー!!!私の家ェェ!!」

私の家だというのに容赦なく個性を使用する爆豪くんを必死で食い止める。許してもらえるか分からないが、気休め程度に何度も何度も謝った。だけど彼の機嫌は直す事を知らなかった。労ってやるしかないと急いでお風呂を掃除し、湯を張れば「殺す!!!」と叫びながらも、脱衣場へ向かってくれた。

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