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伝えたいものとは何か



─ピーンポーン

寝ぼけていた私の耳に鳴り響くインターホン。夢なのか、現実なのか、わからないままうとうととしていたら、再度インターホンが鳴った。
そしてその後も何度も鳴り響くインターホンに、流石に夢ではないと思わされる。

むくりと身体を起こして、何度も鳴り響くインターホンに、何処の新聞の勧誘だと思いながらも、玄関へと足を進めた。

─ガチャ

「新聞ならいりませ…………」

「いつまで寝とんだクソタレ目ェ」

「……あれ?何故だろう、新聞屋さんの君。私の知り合いに凄く似てるんだけど、親戚かなんかかぃ?」

「目ェ覚まさせてやる…」

「あれ!?よくみたら新聞屋さんじゃなくて爆豪くんん!?何故此処に!?今日休みなはず…ってまだ夜…」

「ぁあ"!?こちとら苛々しすぎて眠れねぇんだよ!つか何時から寝とんだテメェは!まだ九時だぞボケェ!」

「いや、今日は一日自主練してて、ヘトヘトで…って、どうしたの。こんな夜遅くに…まさかゴキブリが出て眠れないとか!?」

「んな訳ねぇだろ!!殺すぞクソモブゥ!!」

「既に右手爆破されてますけども!?間一髪避けてなければ、当たってましたよ!?私に!!」

「つかそこどけやカス!!」

「は、はいい!!」

爆豪くんの威勢の良さに圧倒されて、身体を壁側へと寄せた。靴を脱いでズカズカと私の部屋の中へと入っていく爆豪くん。彼は一体何をしているんだろう。検討もつかない私は、恐る恐る彼の後をついていく。

「…」

「…」

私のお気に入りのソファへと腰かけて、先程から黙ったままの爆豪くん。成り行きで、床に正座している私。何処からどう見ても、彼にお説教されているように見えるはずだ。実際はそうではないのだが、正座せずにはいられなかった。

「…おい」

「は、はい!!なんでしょうか!?」

「テメェ、今日海にいただろ」

「海?うん、いたよ…ってどうしてそれを!?」

「んなこたァどうでもいいんだよ。質問に答えろ」

「は、はい…」

「…」

「…」

「…半分、」

「え?」

「…あんなとこで何してたんだ」

「海でって事?今日は朝からずっと海で自主練してたけど…」

「…一人でか」

「うん、一人だよ?なんで?」

「…」

「…?」

「…胸くそ悪ぃ。帰る」

「…は!?え、ちょっ、爆豪くん!!」

いきなり立ち上がって私に背を向けて歩いて行くものだから、普段と違う様子の彼を見て、どうしたものかと戸惑った。
ふと見えた彼の横顔は、機嫌の悪そうな顔つきだが、どこか少し寂しげに思えた。

「待ってよ!爆豪くん!」

立ち去ろうとする爆豪くんの腕を掴む。すかさず赤い瞳に睨まれた。怯みそうになるが、ぐっと耐えて視線を交えた。

「爆豪くん、変だよ?何かあったの?」

「…」

「もしかして、また私が何かしちゃったとか!?」

「…」

「そ、それとも、前に爆豪くんの鞄に入ってたおにぎりを、こっそり食べちゃってたのがバレたとか!?」

「んな事してたのかテメェは」

「あれ!?まさかの知らなかったパターン!?ぅおおお!なんてミスを!」

「つか勝手に人のモン食ってんじゃねぇわ。モブの分際で」

「あの時はお弁当忘れてて…つい…」

「次やっとったら殺すからな」

「以後気を付けます…」

「…」

「…」

再び黙りこむ爆豪くん。私も同じように口を閉じた。そして彼が次に口にした言葉に、思わず耳を疑ってしまった。

「…よそ見すんな」

「え?」

「よそ見すんなクソタレ目。下僕は主人だけ見とけやカスが」

「…それ、どういう」

「知るか。いい加減離せや腕」

「あ!ご、ごめん!」

「チッ」

理解できない言葉を並べて、いつものように舌打ちをして、そそくさと帰って行った爆豪くん。何を言いたかったのか、私にはわからないままだった。だけど、ほんの少しだけ、彼に言われた言葉が嬉しく思えてしまったのは、何故だろう。