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守ってくれたその人は



「やっとお昼だね〜!デクくん!名前ちゃん!お昼ご飯食べに行こー!」
「僕もお供させてもらうよ!」
「麗日さん!飯田くん!」
「お腹すいたなぁ」
「今日は何食べようかな…」
「さ!早速食堂へ向かおう!」
「おう!!」


私の言葉と共に巨大な爆発音が聞こえてきた。恐る恐る視線を向ければ、不適な笑みを浮かべる爆豪くんと目が合ってしまう。


「テメェは俺の下僕だろうが」
「…ん?私の事、言ってるのかな?爆豪くん…」
「モブ共と飯食いに行く暇があんなら売店でコーラとポテトと買ってこいや」
「あの…私のお昼は?」
「俺のが済んでからに決まってんだろ」
「な、なんちゅー理不尽さ…」
「爆豪くん!女子に対して酷すぎる扱いではないか!第一君の命令より彼女の昼食の方が優先順位であろう!」
「黙れクソメガネ!いちいち俺に指図すんじゃねぇ!!」
「…名字さん、もしかして昨日の…」
「…うん…そうみたい……あ、後で行くから先に行ってて!皆!」
「大丈夫なん?名前ちゃん…」
「彼の言いなりになんてならずとも構わないのだよ!名字くん!」
「だ、大丈夫!直ぐに行くから!飯田くんも心配してくれてありがとう!」


心配する皆を説得させてから、私は急いで売店へと向かった。なんて忠実な下僕なんだろう。自分の事を少し褒めて慰めた。


「名前ちゃん…爆豪くんに目の敵にされてるんかな…」
「…いや、それは違うと思う」
「どうしてそう思うんだね?緑谷くん」
「なんだか名字さんと出会ってから、かっちゃん…少しだけ丸くなった気がするんだ」
「爆豪くんが?」
「うん…この数日間で凄く変わったんだ。僕への態度はいつもと変わらないんだけど…名字さんといると少しだけ表情が穏やかになるっていうか…」
「…デ、デク、くん後ろ…」
「えっ…」
「ぺらぺらぺらぺら喋りやがってよぉ…俺が居ること忘れとんのかクソナード…」
「此処教室だったの忘れてたぁぁ!!!」
「死ねぇぇぇ!!!クソデクゥゥ!!!」


私が立ち去った後にそんな爆発音が教室で鳴り響いていた事は、私は知らずにいた。


「…ふぅ。ようやく購入できた…」


売店前の長い行列をなんとかクリアし、購入し終えたコーラとポテトを手に持って、急いで教室へと戻ろうとしていた。その時だった。

─ウゥ〜!!ウゥ〜!!『セキュリティ3が突破されました…』

いきなり警報が校舎内へと鳴り響き、そのまま緊急時のアナウンスが流れ始める。セキュリティ3ってなんのことだろう。そんなことを考えていたら、廊下には沢山の人が群がってきていて、我よ我よと逃げるために必死になっていた。

突破されたって言うことは…まさか、侵入者が!?

逃げようとしても、既に周りは人に囲まれてしまっており、全く身動きがとれない状態になっていた。いかん、このままでは爆豪くんへ届けるはずのポテトがこの人達に押しつぶされてしまう。押しつぶされたポテトなんかを彼に渡してしまえば、確実に殺られてしまうだろう。

ポテトを持っていた片腕を高らかと頭上にあげながら、押しつぶされないようにと、人と人との隙間を伝って、なんとか壁側までたどり着いた。
これでポテトを押しつぶされる心配はなくなった。ほっと胸を撫で下ろす。だが安心したのもつかの間、今度は自分の身体自身が押し寄せてくる人々につぶされかけてしまう。

「うぅぐぬぬ…」

このままではポテトよりも私の身がもたない。
そう思っていたら不意に視界が奪われた。何も見えないが、微かに香る知り合いの香りに、何故か心臓がときめいてしまう。
私の視界が遮断されている理由は、目の前にいる人に人混みから守られているからだろう。
切島くんかと思ってみたが、切島くんの香りではない。もっと、こう…近くでよく話す…そんな感じの人の香りだ。

香りに頭を悩ませていたら、不意にどこからかと飯田くんの「大丈ー夫!!!」という声が聞こえてきた。よかった。飯田くんが大丈夫と言うのであれば大丈夫だろう。安心していたら奪われていた視界がクリアになり、光を取り戻した。

先程の人にお礼を言おうと辺りを見渡すが、その人の姿はどこにもなかった。一体誰だったんだろうと頭を悩ませる中で、最後に聞こえた舌打ちに、まさかと想像しては苦笑いをした。