×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

マスメディアの群



「いたたたた…」


昨夜の爆破事件(犯人は爆豪くん)のせいで、身体の至るところが擦り傷だらけになっており、傷口がずきずきと痛んでいた。いつものように雄英高校近くの最寄り駅で降りて、とぼとぼと歩いて学校へと向かっていた。

昨日は助けに来てくれた出久くんまでも、爆破の被害に合わせてしまって、心の底から申し訳なく思っていた。お詫びにと、以前購入していたオールマイトチョコを持ってきたのだが、出久くんは喜んでくれるだろうか。

そんなことを考えていたら、あっという間に正門が見えてきた。が、いつも以上に正門が人々で賑わっていて、カメラを持った人達が目についたのでマスメディアの人達のようだ。

彼らの声に耳をすましてみれば、どうやらオールマイト目当てで来ているようだ。
この群れをどう攻略すべきかと頭を悩ませていたら、後ろから聞きなれた声で自分の名前を呼ばれた。


「何してんだ、名字」
「と、轟くん!おはよう!」
「…なんだあいつらは…」
「なんだか、オールマイト目当てで来てるみたいなんだけど…登校する生徒全員に話しかけてるみたいでね…どう攻略しようかと悩んでて」
「…気にする事ねぇだろ。行くぞ」
「え!?あ、ちょっと!轟くん!」


私の手を引き、群がるマスメディア向けてズカズカと歩いて行く轟くん。そんな轟くんの後ろを必死について行った。
いやいやそんな事よりも、手を!手を!手を繋がれてますけども!?こんな状態をマスメディアさん達に見られては!全国の轟くんファンの皆さんに殺されてしまう!


「あれ、貴方は!エンデヴァーの息子さんじゃないですか!!」
「…お前らには関係ねぇ」
「って、ええ!?もしかして貴女!エンデヴァーの息子さんの彼女!?」
「違いますよ!?こんなイケメン様に私が釣り合うように見えますか!?」
「…それもそうですね」
「まぁそれでいいんですけど!ちょっとだけ悲しいですその答えはっ!」
「あぁ!エンデヴァーの息子さん!待ってください!オールマイトとはどういった」


しつこく話しかけてくるマスメディアに対して、轟くんが少し嫌そうな顔をしていたのを私は見逃さなかった。


「はーっはっはっはっはっ!!もう大丈夫!何故だって?私が来た!!」
「な、なんですか急に!?」
「わーたーしーがーきたぁあ!オールマイトの物真似ですよ!はっはっはっは!マスメディアの諸君達!」
「貴女には聞いてませんけど!」
「わーたーしーがー」
「…もうこの子達はいいわ、他の子にいきましょう」


なんとかオールマイト物真似のおかげで、マスメディア達を遠ざける事ができた。
良かったとため息をつくと、轟くんに小さく笑われた。


「なんだよさっきの。似てたじゃねぇかオールマイトに」
「ええ!?本当!?それはそれで嬉しいな」
「……ありがとな」
「へ?」
「俺に気ぃ使ってくれたんだろ」
「あ、いや、そんなつもりは…」
「助かった…ありがとな、名字」
「あ、うん」


こんなイケメンな轟くんにお礼を言われるだなんて、私の人生捨てたもんじゃないな。少し浮かれていたら、巨大な爆発音が後方から聞こえてきた。そしてその爆音は徐々にこちらへと近づいてきている。まさかとは思うが、そのまさかである。


「おいコラクソタレ目…俺の前を呑気に歩いてんじゃねぇぇ…」
「ぎゃぁぁぁ!爆豪くんっ!!お、おは、おは、よぅ」
「黙れカスっ!!気安く挨拶してきてんじゃねぇぇっ!!!それに何仲良く半分野郎と登校して……」


先程まで殺気立っていた爆豪くんが、ある一ヶ所を見つめて急に固まってしまった。いつもの彼からは想像できない程の間抜け面をしている。なんだろうと思いその視線の先を辿ると、そこにあったのは私と轟くんの仲良く繋がれていた手だった。


「わ!!!!ご!ごめんなさい!」


急に恥ずかしくなり急いで轟くんから手を離した。その様子を見て更に機嫌を悪くした爆豪くんに、襟元を掴まれてそのままずるずると引きずられていく。


「昨日の怒りがまだ収まりついてねぇんだよ…思う存分働けや下僕」
「あの…言ってる意味がわからんのですが…」
「わからせたらぁ…じわじわとな!!」
「なんだか顔つきがドSそのものですよ!?私はMじゃないんですけど!」
「黙れ。テメェに拒否権はねぇ。せいぜい俺の下僕として働けや」
「ちょ、誰か!お助けを!ヘルプミー!!!」
「つーか自分で歩け!重てぇわクソが!」
「引きずっていったの爆豪くんじゃんか!重いって女子に対して失礼すぎる!」
「あ?女子がどこにいんだよ!」
「目の前にいますけども!?」


口喧嘩を繰り広げながらそのまま共に登校している私と爆豪くんを、ただただ呆然として見つめていた轟くんであった。