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好奇心




瞳を開ければヘルズ・コアの中だった。
ヘルズ・コア内の液体をひと飲みしてから、外にいたラミーに声をかける。
まだ皮膚の形成が終わっていないと出ることを拒まれたが、色々と確かめたい事もあり、ラミーの意見を無視して自ら外へと出た。

「駄目でしょ!@ちゃん!まだ完全に修復できてないのに」

「……@…」

「あれ?また記憶管理の不備がおきたの?なんで@ちゃんとテンペスターくんはこうなるんだろう…」

「…@……いや、なんとなく覚えてるよ。私の名前?だよね」

「良かった!少しでも残ってて」

「うん…」

私は再生するたびに一部の記憶が全て消える。テンペスター程ではないのだが、記憶がなくなり再生するたびにラミーから色々と情報を与えてもらっている。

「おや?そこにおんのは@やなぁ?あんた、ぎょうさん人間にやられてきたらしいな。醜いもんやで」

そんなことを言葉を吐き捨てならが私の前に現れたのは、私を見下すように不適に笑うジャッカルだった。

「なんでそんなことあんたが知ってるのよ」

「俺はなんでも知っとんのや。つーか、そんなんやったら今度の計画の時も足手まといになるんちゃうか?ゼレフ書の悪魔が呆れるなぁ」

けらけらと下品な笑い方をするジャッカルを睨み付ける。

「そんな目で見られても、痛くも痒くもないけどなぁ。いい加減人間に対して手加減すんのやめときや」

そんな言葉を笑いながら呟いて、この場を立ち去っていった。そんなジャッカルを見て相変わらず暇な奴だなと、少し呆れながらも私もこの場から立ち去ることにした。


先程ジャッカルが言っていたように、数ヶ月後にマルドギール様が計画された『フェイス発動計画』が実行される。評議院の連中を片っ端から皆殺していくだけで、任務はそう難しいものではない。全ては我らゼレフ復活のため…マスターENDの復活のため…そんな思い胸に抱いて日々を過ごしている。

だが、脳裏に埋めつけられた自分の使命に少し疑問をいだき始めたのはこの頃からだった。


マスターENDはとても強力な炎を操る悪魔だと言う話を、以前シルバーから聞いた事がある。
まだマスターENDのお姿をこの目で拝見した事はないのだが、『炎』というキーワードに一つの記憶を思い出した。

いつもなら忘れるはずの以前の記憶が、少しだけ脳内の片隅に残っていたのだ。

桜色の髪色をした人間。魔導士という連中だったはずだ。彼もとても強力な炎を自分の魔法として使っていた。彼の炎をまともに受けて、感じたものは意外なものだった。

そう、彼のもつ炎の本質が、どこか自分達と似たものがあったのだ。

何故、人間ごときに私達と同じ何かを感じてしまったのかはわからないが、彼が放った炎は人間のものとは思えないものだった。

そして、見ず知らずの他人を庇い、私を睨む彼の目は少しばかり私の好奇心をそそったのだ。

「…よぉ。偉く深刻そうな顔してんなぁ…@」

「……シルバー…」

自分の部屋へと足を進めていれば、聞き慣れた声に足を止めた。

「派手にやられたらしいな。人間に…」

まだ皮膚に火傷の後が残っており、その部分を見つめ「痛々しいな」と呟いた。

「…なんだか、人間だけど人間じゃないような奴に出くわして…不意をつかれたの」

「へぇ、なんだか面白い奴だな。そいつ」

「…うん、変わった人間だったよ。他人を庇って、他人のために私を酷く威嚇してた」

「ほぉ…」

私が考えていたことを全て見透かして、シルバーは少し微笑んだ。

「ま、他の奴等が思っているより、人間も悪くない生き物だぜ」

「…そうなの?なんでそんな事をシルバーがわかるの?」

「………」

「………シルバー?」

「………いや。昔のことをな、少し思い出しただけさ」

「…昔のこと、か。記憶があるということはとても便利なものなんだね」

「あ、そういやぁお前も記憶が消えるんだったなぁ。それにしても今回はよく覚えてたじゃねぇか」

「うん…なんだかあの人間がとても興味深くてね…覚えていたことに、自分でも驚いたよ」

「そんなに人間に興味があるんなら、キョウカに相談してみたらどうだ?」

「え?何を?」

「お前の脳内へ人間の感情を埋め込んでもらえよ。ラミーならそんなこと余裕でできるだろうし…いずれ消え行く種族なんだし。一度体験してみんのも悪くねぇんじゃねぇか?」

「………それもそうかな、」

「俺はいいと思うぜ。どうせお前の記憶も残る事もないだろうし、一度くれぇ許してくれんじゃねぇか?」

「………うん。ちょっと相談してみるよ。ありがとう、シルバー」

シルバーの提案に少しばかり関心をもった。
彼がどうしてそこまでも人間に干渉しているのかは定かではないが、彼の話は自分の中の好奇心をかりたてたのだ。