prologue
『久しぶり』
そう、その言葉通りに久しぶりに夢を見たのだ。
それはとても不思議なものだった。
目の前には一人の人間がいて、その人間は紛れもなく私そのものだったのだ。
人間の姿は動きやすいため、いつもその姿に化けてはいるものの、こうも完成に人間となることは一度もなかった。
いや、許されていなかったと言う方が正しいだろうか。
私はゼレフ書の悪魔で、『冥府の門』というギルドに所属している。
再生する度に人間を殺し、ゼレフ復活を実現させるための道具にしかすぎないのだ。
そんな私が何故、人間の姿をしているのかと疑問に思った。
「お前は何者か」と目の前にいる私に問えば、静かに私はこう答えた。
『未来の私だ』と。
信じがたく目を見開き、目の前の私を見つめていれば、自然と私は口を開いた。
「人間も悪くはない。一なる魔法は素晴らしいものだ」
と言葉を残した。
私達は『魔法』などというものは使ったことがない。いつも使っているのは『呪法』なのだ。
『一なる魔法』とはなんなのか。理解が出来ずにいた私は、目の前の私に問いかけるが、私はそれ以上言葉を話すことはなかった。
「私なら、いずれ分かるはず」と語りかけるかのように、目の前の私は少し微笑んで、光の中へと姿を消していったのだ。
不思議な夢を見たものの、その夢のことはすっかり忘れ去っていた。
ある日を境にその事を思いだし、その意味を知ることになる事を、今の私はまだ知らずにいた。